日本ハムの新庄監督にも影響を与えた? かつて恩師「野村監督」と「たけし軍団」がファンを歓喜させた「伝説のツーランスクイズ」とは

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 新庄剛志監督率いる日本ハムが5月13日のオリックス戦で鮮やかなツーランスクイズを決め、「これぞ新庄野球!」ともてはやされた。同27日のソフトバンク戦では、2人目が生還に失敗したものの、ツーランスクイズはすっかり”新庄マジック“の代名詞になった感がある。そして、過去にも伝説的なツーランスクイズが何度かあった。【久保田龍雄/ライター】

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野村監督が“どや顔”「投げて打ってばかりが野球じゃないんや」

 新庄監督の師匠にあたる野村克也監督が阪神時代にツーランスクイズを成功させたのが、1999年4月7日の広島戦だ。

 0対2とリードされた8回、阪神は1死から坪井智哉の安打を足場に平塚克洋のタイムリーと敵失などで逆転に成功。なおも1死満塁のチャンスで、星野修はカウント1-1からスクイズを試み、一塁方向に転がした。

 三塁走者・ジョンソンが4点目のホームを踏み、打球を処理したファースト・浅井樹が一塁に送球する間に、二塁走者・今岡誠もホームイン。意表を突くツーランスクイズで試合を決めた。

 6対2の快勝後、野村監督は「あれが野球や。投げて打ってばかりが野球じゃないんや。今岡がいい走りをしたよ。打って勝つのもいいけど、こういう相手の隙を突くとか、好走塁で勝つほうが、オレとしては気分がいい」と鼻高々。実は、このプレーは前年の秋季キャンプのときから練習させていた。1年に1度あるかどうかのプレーのために、ここまで周到に準備していたのは、“ID野球”ならではと言える。当時阪神の選手だった新庄監督も、少なからず影響を受けたと思われる。

今度は達川監督が仕返しのセーフティバント

 ところが、野村監督は“どや顔”から約3ヵ月後、7月22日の同一カードで、見事にお返しされてしまう。

 1対0の7回2死二、三塁、広島は黒田博樹が藪恵壱の初球をセーフティスクイズ。打球は狙いどおり藪の右側を通過し、二塁手前に転がった。

 この間に黒田は全力で一塁を駆け抜け、セーフになる。さらにファースト・ジョンソンが送球を落とす間に二塁走者・金本知憲も2人目の生還をはたした。

 記録は内野安打になったので、ツーランスクイズ(犠打)ではないが、この2点がモノを言って、広島は3対2で逃げ切り。くしくも3ヵ月前の広島市民球場の仇を甲子園で取った。

 雪辱をはたした達川晃豊監督(本名は光男。監督時代は晃豊が登録名)は「今度はセーフティスクイズだったけど、お返しできたね。あれは大きな2点だったね」と、してやったりの表情。

 一方、見事にやり返された野村監督は「バッティングの良くないピッチャーには(プッシュバントは)よくあること。いいバントだったけど、ファースト(ジョンソン)が捕っていれば、何てことなかった。エラーしたから大げさになっただけや」と冷静に分析していた。

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