二刀流復帰「大谷翔平の28球」から見えたこと 160キロ計測も“伝家の宝刀”がわずか1球だった理由

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28球のうち高めへの投球はゼロ

 そもそも大谷が投じた28球をコースの高低で見ると、そのすべてが低めもしくは真ん中に投じられていた。バッテリーを組んだウィル・スミスが構えたミットの位置も打者の膝元がほとんどで、意図的に低めに投球を集めていたと推察できる。

 本来、大谷のように100マイルを超える剛速球を持つ投手は、高めの速球と落ちる球のコンビネーションで打者を打ち取るのが基本パターンだ。以前の大谷もフォーシームを高めに投じ、打者に「目付け」をさせた上で、スプリットを低めに投げ込むことが多かった。

 ただこの日の大谷は高低の活用はほぼなし。4番シーツの4球目にお試し程度に1球だけ投げたが、故障明けということで、肘への負担が大きいスプリットを敢えて避けていた可能性が高い。まずは安全運転を優先させた形だろう。

 それでも、次回以降は徐々に球数や出力も上げていくとみられる。大谷にとって高めの速球と鋭く落ちるスプリットを完全解禁するときが本領発揮のときとなるだろう。

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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