侮辱的な替え歌は「商魂こめて」以外にも 「金で釣った」「女たらし」などなど…ファンが合唱してきた“下品すぎる”替え歌の数々とは

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赤星憲広がテレビで金本の「替え歌」を披露したことも

 阪神ファンも近鉄ファンも、多数が関西人。これらの替え歌は、関西人ならではの“パロディ精神”の産物と言えるかもしれない。

 その阪神では、チーム内で替え歌が歌われたこともある。ターゲットになったのは、2003年に広島からFA移籍してきた金本知憲だった。

「打球がライトスタンドを ひとまたぎ それ行けチャンスだ金本 燃えろ金本」の応援歌が、「メシは割り勘 金本 リボ払い それ行け偽善者金本 ケチだ金本」という、まるで守銭奴のような歌詞に変えられていた。

 この替え歌は、「ひとまたぎ」とスタンドで歌うファンの声が同じ母音の「リボ払い」に聞こえたことがきっかけで誕生したという。シーズンオフにナインが出演したテレビ番組の中で、赤星憲広が司会の明石家さんまに「シャレでやるからね」と促され、本人の前でビビりながら披露したこともある。

 実際の金本は、投手陣にシーズン成績のノルマを課して、クリアすれば「金本賞」の豪華賞品をプレゼントしたり、番記者たちに焼き肉をご馳走するときにも「気を遣って安いところは絶対に選ぶな。どんなに高くてもいいから美味い店を選べ」と指示するなど、太っ腹で知られている。あくまで推測だが、あえて「ケチ」と歌われるギャップが可笑しさを呼んだようだ。

「悔しいけど笑った」ぐらいのレベルなら?

 また、金本の前年に日本ハムからFA移籍してきた片岡篤史の応援歌は、「右投げ左打ち 実家はヒノキ風呂 リフォームリフォーム 片岡篤史」という奇妙な内容の歌詞だった。

 ちょうど阪神に移籍した頃、実家にサウナと風呂をプレゼントした話がテレビのプロ野球番組で紹介されことが発端だった。風呂は普通のホーローバスだったのだが、なぜか応援歌ではヒノキ風呂に変わっていた。いきさつはどうあれ、実家の風呂までネタにして、「リフォームリフォーム」と歌うのは、いかにも関西人らしい乗りの良さだ。

 当初片岡は打席に集中していたため、歌詞の内容を知らなかったそうだが、対戦相手の選手から指摘されて以来、気になって仕方がなかったという。

 今年4月5日放映の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)に出演した片岡氏は「これからやるぞのときに歌われてみい。テンション下がるで」と振り返っている。

 野球に野次はつきもの。替え歌もその一部といえるが、「笑えない内容」の誹謗中傷ではなく、相手チームのファンが「悔しいけど笑った」と容認できるレベルのものが望ましい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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