5月16日の中日と阪神は「采配ミス」で“勝てた試合”を落とした? 先週のプロ野球で「選択が勝負を分けた場面」を検証する

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 野球においてはあらゆる選択の場面があり、その采配によって勝敗が分かれると言っても過言ではない。果たして、その判断は正しかったのか。過去1週間のプロ野球で行われた試合から、勝敗を大きく分けた場面について取り上げてみたい。【西尾典文/野球ライター】

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継投失敗で巨人に勝ち星を献上した中日

 プロ野球で大きなポイントとなることが多いのが投手起用だ。特に、近年は先発投手の完投数が減少しており、継投のタイミングや判断が話題になることも多い。

 先週、継投によって試合が大きく動いたのが、5月16日の巨人対中日戦。試合は巨人先発の赤星優志、中日先発の金丸夢斗がともに好投を見せてロースコアの接戦となる。巨人は4回裏に増田陸のソロで先制するが、中日は6回表に上林誠知のソロで同点に追いつく。

 さらに試合が大きく動いたのが8回だ。巨人は勝ちパターンのセットアッパー、大勢を投入するも、上林が2打席連続となるソロホームランをセンター右に叩き込み1点を勝ち越す。

 その裏、中日は新外国人のマルテが登板。逃げ切りを図ったが、ワンアウトから代打の中山礼都にツーベースを打たれると、続く浅野翔吾から三振を奪ってツーアウトとした後に、泉口友汰に四球を与えて一・二塁のピンチを招く。

 ここで井上一樹監督はマルテを諦めて、左腕の斎藤綱紀をマウンドに送ったが、巨人の3番、吉川尚輝にスリーランを浴びて逆転を許したのだ。9回表は昨年まで中日でクローザーを務めていたマルティネスが無失点で試合を締め、巨人が鮮やかな逆転勝利を飾った。

なぜマルテを降板させたのか

 大きな勝負の分かれ目となったのは、やはり8回裏の中日の継投だろう。マルテはここまでチームトップタイとなる10ホールドをマークしており、6試合連続無失点も記録するなどここまでセットアッパーとして結果を残している。

 それを考えれば、1点を勝ち越した8回に登板するというのは、妥当な起用と言える。議論となっているのは、ピンチを招いた場面で斎藤を投入したという点だ。

 マルテはこれまでの15試合全てで1回を投げ切っており、イニングの途中で降板したことはない。そんなセットアッパーを降板させて、斎藤を投入したというのは、かなり慎重な采配だった。それが完全に裏目に出た形と言えるだろう。

 ホームランを放った吉川は左打者であり、左投手の斎藤をぶつけるのもセオリーと言えるが、斎藤の昨年の左右打者別成績を見ると、そこまで圧倒的に左打者を抑えているわけではない。

 また、吉川との昨年の対戦成績は3打数2安打、三塁打1本と、対戦数は少ないながらも打ち込まれている。そういった相性を考えても、マルテを続投させるべきだったとの声があっても、当然と言えるだろう。

 もちろん継投の成功、失敗は結果論であるが、巨人の勝利の方程式である大勢から1点を勝ち越した後に逆転を許しただけに、中日にとっては何とももったいなさが残る敗戦だった。この結果を受けて井上監督と中日首脳陣が、今後の継投でどんな判断を下していくかに注目だ。

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