“さらし投げ”から復活「近藤廉」はクビになるはずだった… 返り咲きのウラにあった「立浪監督」の存在

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「お前、本当はクビだったぞ」

 5月1日、バンテリンドームでの中日対阪神戦は、中日が3―2で勝利した。

 ヒーローインタビューのお立ち台には、プロ初勝利の三浦瑞樹(25)、来日初セーブのマルテ(30)と共に、プロ初ホールドをマークした近藤廉(26)の姿があった。

「近藤といえば、“さらし投げ”で有名な選手ですね」

 とスポーツ紙ドラ番記者が苦笑する。

 それは2023年8月25日のDeNA戦で起きた。2―8と敗色濃厚な9回、2年ぶりに1軍のマウンドに立った近藤は、被安打8、与四死球5、10失点と大炎上。1イニングに62球も投じたのは、NPBワースト2位タイだった。

「当時の監督は立浪和義さん。暗黒時代の象徴ともいうべき出来事でした。敗戦処理に投手を浪費したくなかったんでしょうけど、“さらし者”同然の選手起用法は物議を醸しました」(同)

 近藤は翌日、登録を抹消され、そのままシーズン終了。防御率は72.00。オフに戦力外通告を受けた後、背番号が3桁となる育成契約で再出発となった。

 実は、このとき立浪監督が動いていた。中日の公式YouTubeで、近藤自身がこう明かしている。

「落合英二さんが2軍投手コーチをやっているときに『お前、本当はクビだったぞ。でも、立浪さんが“ああいう経験をした人は強くなると思うから、あと1年残してやってくれ”って』。(略)立浪さんに恩返しじゃないですけど、『結果出して間違ってないということを示せ』って言われました」

 さしもの指揮官もさすがに寝覚めが悪かったか。

再び選んだ「背番号70」

 昨季の近藤は、2軍でチーム最多の46試合に登板し、防御率2.09。今季は、井上一樹新監督の下で1軍キャンプに加わり、オープン戦で3試合無失点。ウエスタンリーグでも7試合無失点と好調を維持し、4月24日に再び支配下登録された。

 会見では、さらし投げの際に背負っていた背番号70をあえて選んだと明かし、

「あの試合で考え方、投げ方が変わった。あの試合があるから今の自分がある」

 と語っている。

 2年ぶりとなる1軍出場は27日のヤクルト戦。2―6とビハインドの9回に登板し1回無失点。これで信頼を得たのか、5月1日は3―2とリードした6回にマウンドを任され、1回を無失点に抑えた。

「その瞬間、井上監督はベンチの壁をたたいて大喜び。会見でも『これで一皮剥けてくれたら』と期待を語っていました」(前出の記者)

 だが、次に出場した4日の広島戦は、4―7と劣勢の7回に登板し2失点。翌日に2軍落ちしてしまったが、7日のオリックス戦では1回を無失点に抑えた。立浪さんへの恩返しはこれからだ。

週刊新潮 2025年5月15日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。