全治3ヵ月の重傷で「岡本和真」前半戦絶望…悪夢の交錯プレーに巨人OBが「ベンチの責任」を指摘する理由
基本とは異なるプレー
ならば岡本はどうだったのだろうか。
「私は長年、アマチュア野球の指導にも関わってきました。その経験に基づいてアマの指導現場で教えている“一塁手の守備における基本中の基本”を考えると、確かに関係者の指摘は正しいと言わざるを得ません」(同・広澤氏)
一塁手の守備における基本とはどんなものか。それは一塁ベースを、打者が走っていくラインを中心として左側と右側に分割することだという。
「バッターが一塁に向かって走っていく視線で見るとベースの左側、つまり二塁を向いている側で守備を行います。一方、ベースの右側、つまりファウルグラウンドを向いている側は一塁を走り抜ける打者のために空けておくのが基本です。そうしないと走塁妨害を宣告される危険性があります。この基本から考えると、あの時に岡本選手は逸れたボールを捕ろうとミットを右側のスペースに伸ばしてしまいました。これでは左手が中野選手と衝突するのは当然だと言えます。もちろん岡本選手が一生懸命にボールを追った結果ではあるのですが、あれは三塁手の送球ミスと割り切って捕球せず、ボールがファールグラウンドを転々とすることを前提にプレーすべきだったと思います」(同・広澤氏)
ハインリヒの法則
と言うことは、岡本の戦線離脱は彼の“自業自得”なのか──広澤氏は、それも事実とは異なると指摘する。
「現在のプロ野球では複数のポジションを守るユーティリティプレイヤーが注目を集めています。岡本選手も三塁と一塁、さらに外野も守らされてきました。複数のポジションを守ること自体は何の問題もありません。問題なのは守備コーチがことある毎に、それぞれのポジションにおける基本を徹底して教えているかどうかです。巨人に限らず、丁寧な指導を心がけている守備コーチが12球団にどれだけいるのかという観点は重要ではないでしょうか」(同・広澤氏)
アメリカの損害保険会社の安全技師であったハインリッヒが発表した「ハインリヒの法則」は、労働災害の分野では基本中の基本として知られている。
1件の重大事故の背後には、“ヒヤッとした”や“ハッとした”という事故未遂が300件あるという経験則だ。
「岡本選手が一塁を守っていた時、必ず似たような状況が起きていたはずです。その際、守備コーチはファーストの基本を再確認させることで、岡本選手が安全にプレーできるよう注意喚起する必要がありました。しかし、実際はどうだったのでしょうか。いずれにしても今回のアクシデントで『岡本選手が1塁守備の基本を教えられていない』ことが明らかになりました。つまり岡本選手が負傷した責任を負うべきは、一義的には守備コーチだと思います」(同・広澤氏)
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