巨人リーグ連覇の“不安要素”に期待大だった「2人の高卒野手」の大不振 球団関係者が指摘する「伸び悩みの原因」とは

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本人は一生懸命でも、周りにはダラダラしているように見える

 一方の秋広は、3年目の2023年には121試合に出場して111安打、10本塁打を記録するも、昨年はオープン戦から不振に苦しむと、その後も調子は上がらず一軍でわずか12安打、0本塁打と大きく成績を落とした。

 今年は、ここまで一軍昇格を果たすことができず、二軍でも打率.164という寂しい成績となっている(4月29日終了時点)。そんな秋広の課題について、球団関係者はこう話してくれた。

「性格的なところが大きいと思いますが、どうしても気持ちが見えづらいところがありますね。本人は、一生懸命やっているつもりでも、周りからするとダラダラしているように見える。2mという長身も、そう見えてしまう一因かもしれません。結果が出ている時はそれでも良いのかもしれませんが、結果が出ないとコーチやチームメイトの目も厳しくなります。今は“負の連鎖”に陥っている状況だと思います」

 昨年のキャンプでは、寝坊による遅刻を指摘されたことがあり、こうした点も首脳陣の信頼を損なう要因の一つであることは間違いない。

 二軍の成績を見ても、2022年は393打席で9本塁打だったが、昨年は360打席で2本塁打と大きく減少。今年は76打席で既に2本塁打を放っているものの、打率は低く、三振が増えている。これらの数字やプレーぶりからも浅野と同様に打撃スタイルに迷っている様子が感じ取れる。この状態から抜け出せないと、浅野に続いて“三軍降格”になる可能性も出てきそうだ。

「圧倒的な成績を残して、周囲を黙らせるしかない」

 さらに、彼ら自身の問題以外にも、巨人では若手が育ちづらい環境がどうしてもあるという。前出の関係者は、以下のように指摘する。

「球団の内部には、何年も続いて低迷することが許されない雰囲気があり、FAや外国人選手の補強も他球団と比べて圧倒的に多いです。今年もオフに甲斐拓也とキャベッジを獲得していますし、昨年のドラフトでも大学生の野手2人を高い順位で指名しました。将来性が高くても、育成に時間を要する高校生の選手を育てる機運はどうしても薄いと思いますね。過去を振り返っても、高卒の野手で完全なレギュラーとなったのは、坂本勇人以来となると、岡本和真くらいしかいません。その一方で、(巨人で燻っていた)大田泰示のように他球団(日本ハム)に移籍して、花開いたケースもあります。これはもう球団の“伝統”と呼べるもので、浅野も秋広も少ないチャンスの中で、圧倒的な成績を残して、周囲を黙らせるしかないと思いますね……」

 4月29日の広島戦のスタメンを見ても、生え抜きの高卒野手は、岡本と中山礼都のみだ。その中山も、本職の内野ではなく、レストで出場していた。これを見ても、巨人の高卒野手がレギュラーを獲得するのはいかに難しいかが分かるだろう。

 果たして、あまりに厳しい環境の中で、浅野と秋広が才能を開花させることができるのか。今後の動向に引き続き注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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