SUUMOを定点観測して見えた「晴海フラッグ」の異変 タワマン棟に投げ売りの前兆?
都有地であったことから格安で販売され、タワマン棟「SKY DUO」では最高倍率が142倍にも達したことで話題となった晴海フラッグ。今年3月には、脱税事件を巡って東京国税局が6部屋、総額5億円相当の物件を指し押さえたニュースが報じられた。全戸の販売が終わった今もなにかと注目を集めるのは、すっかり「投機の対象」というイメージがついてしまったことが関係しているかもしれない。そんな晴海フラッグの転売事情を“定点観測”し続けるマンションブロガー「マン点」氏による、最新レポートをお届けする。
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【写真を見る】昨年12月から異変が? 晴海フラッグSKY DUOの転売件数と上乗せ率の推移
毎月20日に晴海フラッグの転売状況を定点観測し1年10か月が経過
「さて、今月も始めるか」
毎月20日。私が晴海フラッグの転売件数を定点観測する日だ。いつものように不動産情報サイトSUUMOにアクセス。検索窓に「HARUMI FLAG」と打ち込む。ヒットしたのは60件。
「もう60件も転売に出ているのか……」
いや、待てよ。よく見ると対岸のザ・トヨミタワーの物件が5件紛れ込んでいる。ザ・トヨミタワーを除くと、残りは55件。だが、この件数をそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。異なる業者が同じ物件を掲載している可能性があるからだ。
55件の物件情報を1件ずつ確認し、所在階や専有面積、間取り図などが一致していないか調べ、同一物件ではないことを見極めていく。今回、重複していた物件は11件。つまり、実質的な転売希望件数は44件だった。
このような地味な作業を毎月20日に実施しているのには、理由がある。
2023年7月18日、三井不動産など10社は、晴海フラッグに建設されたタワーマンションSKY DUO(地上50階、地下1階建て、2棟、総戸数1455戸)の申し込み状況を発表した。
周辺相場に比べて割安だったこともあり、第1期販売573戸に対し、なんと8790件もの応募があった。平均倍率は15.3倍。最上階の特別仕様住戸に至っては142倍に達したという。
「晴海フラッグで、一体何が起こっているのか」
私が最初に晴海フラッグの状況を調べ始めたのは、この発表の1か月前、2023年6月20日のことだった。そして、7月18日。最高倍率142倍という事実を知ったとき、私はマンションブロガーとして、この状況を今後も定期的に観測し続けようと、心に決めたのだ。
タワマンの転売希望件数は増加傾向に
晴海フラッグは、東京ドーム約4個分の約18ヘクタールという広大な敷地に、SEA VILLAGE、PARK VILLAGE、そしてタワーマンションSKY DUOなど、複数のゾーンに分かれた全23棟の高層マンションから構成される。
総戸数5632戸(分譲4145戸、賃貸1487戸)に及び、最終的には約1万2000人が暮らす巨大な街となる予定だ。
このビッグプロジェクトへの注目度は非常に高く、晴海フラッグの販売は、期数を重ねるにつれて抽選倍率が上昇していった。
こうした状況に対し、転売規制を設けなかった東京都には批判が殺到。無理もない。法人や富裕層が投資目的で複数の住戸を申し込んだ結果、晴海フラッグに住みたい一般の人々が当選の機会を奪われてしまったからである。
東京都は2023年5月、三井不動産など11社に改善策を要請。同年6月のタワーマンションSKY DUOの販売開始に合わせて、1名義につき2戸までという「申し込み制限策」が導入された。
しかし、この「申し込み制限策」には、抜け道があった。
たとえば、購入希望者が配偶者や親族の名義を借りれば、実質的には3戸・4戸と申し込み可能になる。また、法人であれば、同一人物が代表を務める複数法人を使い分けることで、名義上は制限を回避できてしまうのだ。
もし、「購入後5年間の転売禁止」といった強硬策が講じられていれば、転売の動きをある程度抑制できたかもしれない。
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