推定1000万円以下の選手も…年棒が安くても大活躍中、ファンも喜ぶ“コスパ良”な「4選手」をピックアップ

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プロ第1号はサヨナラホームラン

 一方の野手でここまで目立つのが、田村俊介(広島・推定年俸1000万円)だ。愛工大名電では1年夏から背番号1を背負うなど投手として注目を集めていたが、徐々に打撃の才能が開花し、野手として2021年のドラフト4位で入団する。

 2年目には一軍初昇格を果たすと、昨年のシーズン開幕前に行われた侍ジャパンの強化試合に召集されている。昨年は開幕スタメンに抜擢されながら打率1割台と足踏みのシーズンとなったが、今年は4月5日のDeNA戦でプロ第1号となるサヨナラホームランを放ち、その後はスタメンでの出場機会が増えた。ここまで3割を超える打率をマークする活躍を見せている。

 田村の成長について、球団関係者はこう話す。

「もともとストレートには強かったのですが、昨年は一軍レベルの変化球、特に落ちるボールにバットがなかなか止まらず苦しみました。落ちるボールを意識して、持ち味だった速いボールへの強さも消えていたと思います。ですが、今年は昨年に比べるとしっかりボールを見極められるようになった。新井貴浩監督も『若手をある程度、我慢して使う』と明言していますので、この勢いで一気にレギュラー定着もあると思います」

 広島は昨シーズン終盤に大きく失速したが、大きな原因は得点力不足だった。若手野手の底上げは必要不可欠だけに、チームの命運を握る存在となりそうだ。

長打率の高さに現れる「魅力」

 パ・リーグの野手では、現役ドラフトで移籍した吉田賢吾(日本ハム・推定年俸850万円)を挙げたい。桐蔭横浜大時代は4年春に神奈川大学リーグで三冠王に輝くなど活躍し、2022年のドラフト6位でソフトバンクに入団した。

 層の厚いチームで1年目から一軍出場を果たすと、昨年は二軍で79試合に出場して打率.303、3本塁打と見事な成績を残した。移籍1年目の今シーズンは初めて開幕一軍入りを果たすと、4月2日の古巣ソフトバンク戦では、一軍で初ホームランを記録している。

 ここまで放った9安打中5安打が長打、2本塁打と持ち味である打力を発揮しているのだ。打率は.243でありながら、長打率が.514。この数字に、吉田の魅力がよく表れている。チームは近年、郡司裕也や水谷瞬ら他球団から移籍してきた選手の活躍が目立っており、移籍組を抜擢するチームの機運が吉田にとっても“追い風”となっている。

 冒頭でも触れたが、年俸が低い選手は当然、実績が乏しく、そういう選手が活躍するとチームに勢いを与えてくれる。今回挙げた4人以外も、ここから驚きの活躍を見せる選手が出てくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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