今年もさっそく起きたプロ野球“不可解判定” 過去には致命的な誤審で審判が“二軍降格”になったケースもあった

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 4月3日の阪神対DeNAでは、同点の9回1死一塁、佐野恵太が空振り三振に倒れたように見えたが、捕手・栄枝裕貴が落球するのを見た真鍋勝巳球審はファウルとジャッジ。命拾いした佐野は四球で出塁し、直後、DeNAは3点を挙げて5対2で勝利。ネット上では「不可解判定」がクローズアップされ、阪神球団もNPBに意見書を提出するなど問題提起した。振り返ると、過去にも暗転劇を呼び込んだ不可解判定が少なからずあった。【久保田龍雄/ライター】

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試合中に誤審を認め、2軍に降格

 ど真ん中のストライクがボールと判定されたことが結果的に勝敗を分けたのが、1997年6月7日のロッテ対西武である。

 西武は4回、先発・渡辺久信がキャリオンに同点タイムリー二塁打を許し、なおも2死満塁のピンチながら、松本尚樹を2ストライクと2球で追い込んだ。そして、3球目も真ん中に直球がズバッと決まり、三振でスリーアウトチェンジと思われた。

 ところが、村越茶美雄球審の判定は「ボール!」。捕手の伊東勤が「あれがストライクじゃなくて、どれがストライクって言うんだ」と呆れながら抗議した。松本も試合後に「あの判定にはホッとした」と証言するほど明らかなストライクだったが、ボール判定は変わらず。

 皮肉にも、渡辺は直後、三振を免れた松本に左翼線2点タイムリー二塁打を浴び、試合も2対3で敗れた。

 それでも、村越球審が自らの判定を貫き通していれば、大きな問題にはならなかったのだが、4回終了後、西武・東尾修監督から「高いのか? 低いのか? コースが外れているのか?」と問い詰められると、「間違えました。通常ストライクと言うところをボールと言ってしまった」と誤審を認めてしまった。問題の判定直後に試合がひっくり返ってしまったことに後ろめたさがあったのかもしれないが、一度判定を下した以上、最後まで「ボール」で押し通すべきだった。

 この事件により、村越審判は6月10日から2軍降格となり、2週間の再研修を課せられている。

「何だこの下手くそ!」って言ったら、一発退場だったよ

 落球した場所がファウルゾーンかフェアゾーンかで物議を醸したのが、2010年9月18日のヤクルト対中日である。

 1対1の5回、ヤクルトは2死二、三塁のチャンスに3番・畠山和洋が右翼線付近に飛球を放った。

 ライト・藤井淳志が俊足を飛ばしてダイビングキャッチを試みたが、ボールはグラブに当たってからグラウンドにポロリと落ちた。藤井が打球に接触したのはファウルゾーンに見えたが、石山智也一塁塁審は「フェア!」をコールし、この間に勝ち越しの2点が入った。

 直後、当事者の藤井、間近で見ていたセカンド・堂上直倫、捕手・小田幸平が「ファウルではないか?」とアピール。落合博満監督も石山塁審目がけて突進し、「ファウルだ!」と激しく詰め寄った。

 そして、間もなく暴言を吐いたとして退場を宣告されてしまう。これが監督就任以来5度目の退場劇だが、過去4回はいずれも遅延行為が理由で、暴言による退場は、抗議の際にも沈着冷静な落合監督にとって異例のことだった。中日はこの2点が大きく響き、1対6と完敗した。

 試合後、石山塁審は「(落合)監督から『お前の見解を聞かせてくれ』と言われた。『ライン上で触った』と伝えたところ、次第に暴言に値するような言葉が出てきたので」と説明したが、暴言の内容については明かされなかった。

 一方、不可解判定による痛い敗戦で2位・阪神に1・5ゲーム差に詰め寄られた落合監督は、何を聞かれても、表情をこわばらせたまま無言を貫いたが、2022年11月4日に更新された自身のユーチューブチャンネルで「『何だこの下手くそ!』って言ったら、一発退場だったよ」と明かしている。

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