「生まれたのが男の子だと分かると失神」「家計を支えるために女優業に復帰」 “梨園の妻”として音羽屋を支え続けた「富司純子」傘寿目前の万感
「男の子はまだ?」
結婚を機に富司は梨園の妻に徹し、同年の12月には長女の寺島しのぶが誕生した。
「梨園の妻にとって、最大の使命は跡継ぎとなる男子を産むこと。富司も御贔屓(ひいき)筋から何度も“(男の子は)まだ?”と聞かれたそうです。悪意はないにせよ、これが大きなプレッシャーで、長男の出産後に看護師から“男の子ですよ”と知らされると、気が抜けたのか失神したそうです」
結婚に際し、富司は「散ってこそ花。満開のうちに散ります」との言葉を残していたが、わずか2年後にフジテレビ系のワイドショー「3時のあなた」の司会として復帰。その後は女優業も再開した。
「音羽屋(菊五郎家の屋号)を支えるためでした。七代目は金銭に無頓着で、銀座や祇園で散財を繰り返した。毎月末の請求書は出演料を上回る額で、富司には家計を補うという、やむにやまれぬ事情があったんです」
5月2日、息子と孫は歌舞伎座で襲名披露興行の初日を迎える。梨園での生活が半世紀を超え、年末には傘寿を迎える富司の万感の思いたるやいかばかりか。