ソフトバンク「上沢直之」はエスコンフィールドで罵声を浴びることになる? 古巣のファンから「裏切者!」と強烈なブーイングを浴びた選手たち

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「移籍後に旧広島市民球場で受けたブーイングはトラウマ」

 2008年、広島から阪神にFA移籍した新井貴浩も、シーズン最初の古巣・広島戦では、容赦ないブーイングを浴びせられた。

 前年11月8日、FA移籍を表明した新井は、会見の席で「つらいです……。僕はカープが大好きなので」と言って涙を流した。だが、「喜んで出て行くわけではない」「FAなんてなかったら良かったのに」等の発言も含めて、残留を熱望していた広島ファンの気持ちを逆撫でする結果を招いてしまう。

 翌08年4月1日の広島市民球場での広島戦、宿舎から移動してきた新井がバスから降りると、地元ファンは「大好きやったのに!」と恨みの声を上げた。

 さらに試合開始後、1回1死一塁で3番・新井が打席に立つと、スタンドから「裏切者!」「ツラ見せるな!」「帰れ、帰れ!」などの罵声が一斉に浴びせられ、グラウンドには広島時代の新井のユニホームのレプリカが投げ込まれた。

 新井は自著「赤い心」(KADOKAWA)の中で「旧広島市民球場での最初の打席で受けたブーイングは、今でも鮮明に記憶に残っている。それはある意味トラウマのようになっていた」と回想している。

 だが、2015年、8年ぶりに広島復帰をはたした新井は、3月27日にマツダスタジアムで行われた開幕戦、ヤクルト戦の7回に前田健太の代打で登場すると、球場全体が「ウォーッ!」と盛り上がり、「アライ、アライ!」の大合唱。思わず泣きそうになった新井は「優勝してファンに喜んでもらいたい」と固く誓い、翌16年、4番打者としてチームの25年ぶりVに貢献した。

古巣のグラウンドにも嫌われた?

 最後は番外編。「裏切者!」とばかりに、古巣のホームグラウンドから思わぬ“しっぺ返し”を食ったのが、1995年にヤクルトから巨人にFA移籍した広沢克己である。

 同年5月14日、神宮球場でのヤクルト戦、1点を追う巨人は9回、先頭の広沢が本塁打性の大飛球をライトに放つ。真中満がフェンス際でジャンプしたが、打球は差し出すグラブの上を越えたあと、グラウンドに跳ね返ってきた。起死回生の同点本塁打と思われたが、一塁塁審の判定はインプレー。広沢は全力疾走で三塁に到達し、三塁打になった。

 長嶋茂雄監督が「本塁打ではないか?」と抗議したが、「ベンチからは見えなかった」とあって、最後はしぶしぶ引き下がった。

 だが、右翼席のヤクルトファンは「目の前でコンクリートに跳ね返って(グラウンドに)戻った。入ってましたよ」と証言し、真中も「わかんねえけど、跳ね返り方を見ていると、入ったんじゃないかな」と同意見だった。

 明大時代も含めて長年神宮でプレーした広沢も「ボールがああいう跳ね方をしたときは入ってるんだよ」と納得しかねる様子だったが、ビデオ判定のない時代は、審判の判定が絶対だった。

 直後、巨人は無死三塁のチャンスも生かせず、1対2でゲームセット……。「あれが本塁打だったら」と悔いを残す結果となった。

 前年オフ、野村克也監督から「巨人の体質を考えたら、行かないほうがいい」と反対され、池山隆寛らチームメートの慰留を振り切って巨人にFA移籍した広沢だったが、皮肉にも古巣のグラウンドまで“敵”に回す結果となった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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