関係者は突然の発表に困惑… 「羽生善治」が将棋連盟会長を退任する理由とは
羽生善治九段(54)が今年6月、日本将棋連盟会長の職を任期満了で辞するという。将棋界の顔である会長ポストは、名だたる大棋士が複数期務めるのが慣例となってきた。まだ1期2年の終盤だが、いったい何があったのか。
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20代の“トラウマ”
史上初の永世七冠を2017年に達成した羽生九段。その存在はまさにレジェンドだ。翌年には、将棋界からは初となる国民栄誉賞にも輝いた。23年6月、連盟の会長に就任したが、
「羽生さんは長らく、連盟の運営側には関わろうとしませんでした」
と言うのは将棋記者。
「まだ20代の頃、老朽化が進む東京の将棋会館の建て替えを唱えるも、議案を棋士総会で否決され、それがトラウマになったからだとみられてきたのです。しかし、東京と大阪に新たな将棋会館を建てるプロジェクトが動き出した18年、準備委員会の委員長に就任。その後、悲願を達成すべく、自らの意志で会長となったのです」(同)
東京と大阪の新会館が落成した24年、羽生九段は会長の座にあった。万事順調にコトは運び、今年6月以降も2期目を引き受けるものと目されてきたが、
「少し前から会長を続ける意志がない旨を、親しい人には漏らしていたようです。そして今月1日、将棋連盟の役員予備選挙に“出ない”と会見で自ら発表しました。次期会長はこの予備選を通過した新理事の中から話し合いで選任されます。つまり、予備選に出馬しなければ、自動的に会長続投の芽はなくなります。その理由は、会館の建て替えをはじめとする連盟の“創立100周年事業が終わったこと”だといいます」(同)
突然の発表に困惑
将棋連盟関係者は、突然の発表について困惑の色を浮かべる。
「将棋界の顔を、日本中の誰もが知るあの羽生さんが務める意味は大きい。大会やイベントに姿を見せるだけで、来場者はもちろんスポンサーも喜ぶからです。連盟に支援者やファンを呼び込む強烈なカリスマ性を備えておられる。会長退任を耳にした人たちは皆、半ばぼうぜんとしています」
そこまでの適役を、なぜ降りようとするのか。
「会長職は激務です。各種の大会や全国でのイベントに顔を出すだけでなく、主催企業にあいさつし、棋士や連盟関係者との会合を開き、免状に署名する仕事もある。これを務めながらでは、将棋の研究はままなりません。今、羽生さんは会長職を離れ、棋力の向上に専念したいと考えているようです。名人位や竜王位など積み重ねてきたタイトル位は通算99期。もう1回タイトルを取れば、ついに3ケタ、通算100期の大台に乗りますから」(同)
通算99期は文句なく歴代1位。歴代2位は昭和期に活躍し、1992年に亡くなった大山康晴十五世名人だが、通算80期。ちなみに藤井聡太六冠は現在、通算28期である。
前出の記者によれば、
「羽生九段はさらなる前人未踏の領域に突き進もうとしているのでしょう。名人戦順位戦で上から3番目のB級2組にまで落ち、昨年度の成績も21勝23敗と負け越したものの、若手実力棋士である服部慎一郎七段(25)に先月17日、圧勝しました。50代でタイトルを取った棋士は歴史上、大山十五世名人らごくわずかですが、羽生九段なら成し遂げられるはず」
レジェンドの挑戦は続く。