非オタの国会議員が「声優を人間国宝に!」と声を上げた理由 “第1号”に推す「日本国民の誰もが納得のレジェンド」とは

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質問主意書への反響は

――杉村さんは、1月29日に「声優を重要無形文化財に指定等する可能性に関する質問主意書」を提出しました。

杉村:質問主意書のなかで、私は「声優は、演技力や表現力を駆使して作品の質を高め、その成果は日本の文化の海外発信にも大きく寄与していることから、歴史上、芸術上の価値を有する職能であると考えられる」「声優について、分野として重要無形文化財に指定するとともに顕著な技能を持つ者を人間国宝に認定すること、又は登録無形文化財とすることは、日本の文化産業における人材の社会的地位を向上させるだけでなく、我が国の文化的価値の再評価と発展にも資するものであると考える」と述べました。

――人間国宝の管轄をしているのは文化庁ですが、杉村さんの質問に対して反応はどうでしたか。

杉村:「『我が国の文化的所産としての価値』の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である」と回答がありました。まだまだアニメは文化として評価を確立しているわけではない、という文化庁の価値観が影響しているのかもしれません。

――なるほど、やはりアニメはまだ新しい文化ということですね。いわゆる文化財的なものとして認められる可能性は、現時点では低いのでしょうか。

杉村:満額回答ではありませんが、それでも、「できない」と言っているわけではないんですよね。そこは救いでした。とはいえ、日本はどこまで行っても保守的なところがありますから、新しい概念を人間国宝の文化芸能枠に入れることには抵抗があるのかもしれません。既成概念を取り払う必要があるなと感じました。

声優の人間国宝第一号を選ぶなら

――日本人は今まで見向きもしなかったものでも、国宝や世界遺産などのフレーズがつくと見る目が変わりますからね。だからこそ、人間国宝というイメージは大事だと思います。

杉村:もちろん絶対に人間国宝でなければならないわけではありませんが、やはり言葉の響きに格別なものがありますからね。日本のアニメ、クールジャパンは、日本の文化の地続きであるというデータが、学術的な研究として蓄積されていけば文化庁の見方も変わるのではないかと思います。昔の古文書や歴史書を見れば、声優の原点になるような語り部的な人がいたかもしれません。そういった裏付けができれば、文化庁のなかでも人間国宝としてふさわしいという声が高まってくるかもしれません。その意味では、コンテンツを学術的に支える学芸員のような仕事も、コンテンツ産業の振興には必要なはずですよね。

――もし声優の人間国宝第1号を選ぶなら、どなたがふさわしいでしょうか。

杉村:あまり一人を挙げることはしたくないのですが、やはり、野沢雅子さんではないでしょうか。日本国民の多くは「野沢雅子さんなら、人間国宝になっても違和感はない」のではないかと思います。聞くところによれば、業界内でもおそらく誰も文句を言う人がいないようです。他に該当者が思いつかないくらいの人選だと思います。象徴的な方が人間国宝になれば、国の関係省庁の見方は確実に変わりますよ。

――杉村さんの声優や、漫画・アニメに対する強い思いが伝わってきます。

杉村:私は、日本が国として文化や芸術に力を入れて、クリエイターを育てていく姿勢を打ち出すことが重要だと思います。そもそも、日本のコンテンツ産業は自動車産業に次ぐ予算規模になっていますが、気づいていないうえに知らない人も多いんです。

――今や、コンテンツ産業の市場規模は3兆円を超えるといわれていますからね。

杉村:私は、農業やモノづくりを強化していくのと同じ、人の生活を支える産業、インフラ産業を支える視点で、コンテンツ産業を下支えしていきたいんですよ。声優を人間国宝に位置付けることで、コンテンツ産業の大切さを広く知ってもらうきっかけにしたい。そして、コンテンツ産業が日本のために重要であるという意識が広がれば、きっと声優をはじめとするクリエイターの労働条件改善にもつながると考えています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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