28年前の開幕戦で起きた奇跡!前年1安打だった「リストラ選手」が巨人のエースから放った“驚異の3打席連続弾”

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一塁ベースで声を掛けてきたPL学園の後輩・清原和博

 8回の4打席目、警戒した巨人バッテリーは小早川を四球で歩かせた。自著「負けない集中力 『ZONE』に入った男の一振りの極意」(ベースボールマガジン社)によれば、一塁ベースに立った直後、PL学園の後輩・清原和博が「先輩、『願い』っていうのは叶うものなのですね」と話しかけてきたという。

 プロ12年目で憧れの巨人のユニホームを着た(西武からFA移籍)喜びを表現したものだが、新天地で主砲復活を遂げた小早川は「私は自分自身のことを言われているようでもありました」と回想している。

 試合はヤクルトが6対3で快勝。天敵を攻略しての開幕戦白星スタートに、野村監督は「小早川様様」と賛辞を惜しまず、翌日の新聞には「リストラ男が斎藤雅粉砕」の見出しが躍った。

 この大きな1勝で勢いに乗ったヤクルトは、2年ぶりリーグVと日本一を達成。小早川も8月27日の巨人戦で6回に桑田真澄から同点2ラン、9月2日の横浜戦でも勝利を決定づける2ランを放つなど、12本塁打を記録した。

 昨今のプロ野球では、“野村再生工場”のような鮮やかな復活劇はあまり見られなくなった。そんななか、今季から中日の指揮をとる井上一樹監督がかつての小早川と同じ立場と言える35歳の中田翔に奮起を促したという報道があった。開幕戦でベテランの一振りがチームを乗せる新たなドラマの誕生を期待したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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