「日比谷」「横浜翠嵐」が激増した今年の東大合格者数 背景に意外な志向、意外な不祥事
共学人気の影響
私立女子最難関の桜蔭が、21年71人、22年77人、23年72人、24年63人と推移し、今年は1993年の47人以来の低い数である51人に留まったのも衝撃だった。凋落と決めつけるのは早計だが、共学志向が高まった影響は指摘できるのではないだろうか。共学の渋谷教育学園渋谷(渋渋)は21年の33人から、38人、40人、43人と合格者数を増やし、今年は50人の大台に乗せた。その間、偏差値も上昇を続け、中学受験で桜蔭に合格できる力があっても、共学を理由に渋渋を選ぶ子供はたしかに増えている。
開成、麻布と並ぶ東京「男子御三家」とされる武蔵が23人(しかも現役は11人)と低迷しているのも、同じ「自調自考」を掲げる共学の渋谷教育学園に受験生が流れていることが、原因のひとつとして指摘できそうだ。
共学人気を理由に伸びている学校に、広尾学園(東京)もある。生徒数が減少した順心女子学園が2007年、生き残りを賭けて男女共学化、改称した中高一貫校で、09年から各分野のプロを招いたキャリア教育を始めるなど改革に着手。偏差値がうなぎ上りに上昇した。しかし、偏差値は御三家並みに上がりながら、東大合格者数は21年3人、22年5人、23年9人、24年9人となかなか増えず、塾と結託した偏差値バブルではないのか、という疑問の声が保護者のあいだで沸き起こるほどだった。今年は18人で、ようやく実績が偏差値に追いついてきた。
最後に、女子高の実績があまり振るわないなか、気を吐いた洗足学園(神奈川)を挙げておく。東京女子御三家(桜蔭、女子学院、雙葉)や神奈川のフェリス女学院など、勉強面で自主性を尊重する学校と差別化し、とくに英語と数学など、基準点を超えるまで何度でも再試を繰り返すなど「面倒見の良さ」を重視していることで知られる。聖光学院と軌を一にするように毎年、偏差値を伸ばしてきた。東大合格者数は21年から10人、20人、22人、15人と推移し、今年は過去最高の28人。名実ともに神奈川の女子高のトップに躍り出て、まだ伸びしろがありそうだ。
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