“巨大スカウト集団”摘発で警視庁「生活安全部」と「組織犯罪対策部」がデッドヒート 別々の組織を分かれて追うワケ

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 このところ警視庁による風俗店の摘発のニュースが頻繁に報じられているが、背後にいるスカウト集団によって捜査する部署が違うことに気づいているだろうか。「組織犯罪対策部」と「生活安全部」。2つの部署が別個のターゲットを狙い、競い合うように捜査を展開しているのだ。

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ターゲットは風俗店ではない

 石川県加賀市、栃木県宇都宮市、富山県富山市、大分県別府市…。いずれも今年になって警視庁が売春防止法違反などで摘発したソープランドが営業していた地域である。なぜ警視庁が東京以外の繁華街にまで出張るのか。

「狙いは風俗店ではなく、風俗嬢を紹介しているスカウト集団だからです。スカウトグループの構成員を職業安定法違反容疑で検挙するとともに、受け入れ側である店側にも法を厳格に適用して懲らしめている。警視庁は2つのスカウト集団をトクリュウと位置付け、壊滅を目指しています」(警視庁関係者)

 トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)は社会の様々な営みに入り込んで活動しているとされ、警察庁の号令のもと全国で撲滅作戦が進行している。昨年末にはSNSを活動場所とするインフルエンサーグループが摘発されたことが記憶に新しい。昨年から全国で多発している強盗犯の背後にも警察庁はトクリュウグループがいると見て、威信をかけた捜査を展開中だ。

アクセスの勧誘場所は「ネット空間」

 警視庁が風俗業界に巣くうトクリュウとしてターゲットにしているのが、「ナチュラル」と「アクセス」という2つのグループ。庁内では、ナチュラルは組織犯罪対策部暴力団対策課、アクセスは生活安全部保安課と完全に区分けされて摘発が続けられている。

 本来、風俗関係の取締りは保安課が担当なのだが、

「ナチュラルは反社組織と結びつきが強いことから暴対課が受け持っているのです」(同)

 女性の勧誘方法も両組織は全く異なると言う。

「ナチュラルの構成員は約1500人。昔ながらの、繁華街で女性に声をかける手法で勢力を全国に拡大してきた。活動場所が繁華街なので地元のヤクザと連携せざるを得ないのです。一方のアクセスの構成員は約300人。主にSNSを使って女性を勧誘するため、ヤクザ組織との関係性は薄いとされています」(同)

 実際、ナチュラルはヤクザ組織と大きなトラブルを起こしたことがある。2020年6月、新宿・歌舞伎町で起きた「スカウト狩り騒動」だ。トラブルの原因は敵対するスカウト集団からナチュラルがスカウトを引き抜いたことだったが、その後、暴力団側と和解し活動を続けてきたと言われる。

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