“公務員を辞めたオタク女子”が大バズり… 無加工動画で魅了したコスプレイヤー「すずら」の紆余曲折人生

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初コスプレは「禰豆子」

――コスプレはどんなところから始めたんですか。

 当時はコロナでレイヤーさんの間でも家でコスプレをする「宅コス」がブームだったので、私も自撮りしたコスプレの写真をあげていました。

 最初にあげたコスプレは「鬼滅の刃」の禰豆子だったんですが、600いいねがついてスタートとしてはうまくいきました。「旬のアニメの作品が伸びやすい」「何時に投稿すると伸びやすい」とそれまでどうしたら投稿が伸びるか研究していたことも生かされたと思います。コスプレを最初に投稿するまでの準備期間が長かったこともあって「やっと自分のコスプレができた」という達成感がすごかったです。

 準備期間の間に「このコスプレがしたい」という気持ちがいっぱい募っていて、衣装もある程度ネットで注文していたので、最初の頃はほぼ毎日コスプレの写真を投稿していました。投稿していくうちに、私と同じ初心者のコスプレイヤーさんであったり、私が憧れて見ていたレイヤーさんにもフォローしていただいて。その時はめちゃくちゃ嬉しかったです。でも、まだ「これからもずっと家でコスプレをやるんだろうな」ぐらいに思っていました。

――研究の成果が活かされているのがすごいですね。人前でコスプレを披露したのはいつ頃だったんですか。

 コスプレを初めて3~4か月後です。実家の近くでやっていたイベントにちょっと参加してみようぐらいの気持ちで、両親と姉と一緒にいきました。その時は姉がスマホで撮影してくれただけで、誰とも話さず帰ったんですけど、たまたまそのイベントで見つけてくださったカメラマンさんから後日DMで「良かったら今度、撮影に行きませんか?」と連絡が来て、次のイベントの時にそのカメラマンさんをお呼びして撮ってもらいました。

 そこから北海道で半年くらい活動しました。ただコスプレイベントを調べていると、東京で大きなイベントが開かれるし、有名なレイヤーさんも東京にいるので羨ましい気持ちもありました。

 2021年の冬コミに北海道から参加したんですが、その際に東京のカメラマンさんに「写真集を出してみたらいいんじゃない?」って言われて。そういう活動をするのなら、東京でもコスプレイヤーとしてできるかもしれないと思って。すぐ両親に相談して、上京しました。2022年の春頃です。その頃はまだフォロワーが1万人くらいだったと思います。

「加工しすぎ」と叩かれて「じゃあ動画を」

――ただ、いきなりコスプレイヤーとして生活はできませんよね。お金はどうしたんですか。

 公務員として働いている頃はお金を使う暇がなかったので、ある程度貯金もありましたし、アルバイトをしながら活動すればいいかなって考えてました。

 上京した年の夏コミではコスプレイヤーとして初めての仕事をもらって企業ブースに立ちました。その時に本当に自分が今までTwitterで見てたプロのレイヤーさんになれたような気がしてすごい嬉しかったです。同時に「もっとすごいコスプレイヤーになりたい」と思って、そこからコスプレが本当に自分の夢になりました。

 撮影会にも参加するようになって、2023年の6月くらいにはバイトしなくても大丈夫になりました。

――コスプレイヤーといえば加工で別人になっている人も少なくないですが、すずらさんは生で見てもSNSの写真との差がありません。動画でもかわいすぎるとバズったこともありますね。

 あの動画は2023年の東京ゲームショウで撮影しました。動画を出し始めたきっかけは、コスプレ写真がバズった際にネット掲示板で「重加工しすぎ」みたいに叩かれて。「じゃあもう動画を出そう」と思って出したんです。

 写真がバズると掲示板ですごい叩かれるので、最初の頃はバズること自体が怖かったです。今は大丈夫ですが、ネットが活動の場である分、そのあたりは大変だなと感じてます。

――イメージと違うけどお酒もお好きですよね。YouTubeの配信で「鬼ころし」を飲んでいるのには驚きました。

 一番最初に飲んだ日本酒が「鬼ころし」だったんです。「ぼっち・ざ・ろっく」の廣井きくりのコスプレの時に小道具として買って。それまで日本酒を全然飲んだことなかったんですけど、酔った方がよりキャラに近づけるのかなと思って飲んでみたら意外においしくって。その後、いろいろな日本酒を飲みましたけど、「鬼ころし」=日本酒ってイメージが強いです。

――今後はどういう風に考えてらっしゃるんですか。

 もともとコスプレがしたくてコスプレイヤーになったので、夢はもう叶ってはいるんです。けれど、今はもっともっと有名になって、影響力を持つのが目標です。影響力があれば、コスプレ文化をもっと一般化できるんじゃないかって思っていて。

 まだコスプレというとオタクがやる趣味という見られ方をされていますし、コスプレイヤーの仕事も全体としてけして多い訳ではないので、そうした状況を変えたくって。

 中国だとコスプレイヤーは職業としてかなり確立されているんです。一人のレイヤーに対して衣装チーム、映像チームとチームが組まれていて、クオリティも高い。アイドル的な人気もありますし、日本もそうなってほしいなと思っています。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。2025年1月24日には日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)が発売される。 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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