「ヤクルト村上」の最終シーズンはどうなる…「イチロー」「大谷翔平」「松井秀喜」らの日本球界最終年の成績を振り返ると?

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原監督や長嶋茂雄の慰留を振り切り…

 一方、全試合フル出場して文句なしの成績を残し、チームの日本一にも貢献という最高の結果を出して、メジャー挑戦の夢を叶えたのが、巨人最終年(2002年)の松井秀喜である。

 前年オフ、巨人は翌年FA権を取得する松井に対し、7年契約の56億円という破格の条件を提示したが、松井は固辞し、あくまで1年契約にこだわった。この時点で、メジャーへの夢を視野に入れていたことが窺える。

 翌02年、三冠王を目標に掲げた松井は、リーグ2位の打率.334、自己最多の50本塁打、2000年の自己最多108打点に次ぐ107打点をマーク。首位打者こそ中日・福留孝介(.343)に譲ったものの、本塁打王、打点王の二冠に輝き、チームの2年ぶり日本一の立役者になった。

 そして、日本シリーズ後の11月1日、松井は悩んだ末、「向こうでプレーしたい気持ちが、最後まで消えなかった」とメジャー挑戦を表明。「残ってくれると信じていた」という原辰徳監督や長嶋茂雄前監督の慰留を振り切っての決断だけに、「何を言っても裏切り者と言われるかもしれないが、いつか『松井、行ってよかったな』と言われるよう頑張りたい。やるからには命をかけてやりたい」と不退転の決意を語り、12月19日にヤンキースと総額2100万ドル(当時のレートで約25億4100万円)の3年契約を結んだ。

5年総額12億円の好条件を蹴り、メジャーに渡った新庄

 オリックス最終年(2022年)の吉田正尚も、打率.335、21本塁打、自己最多の88打点、2年連続の最高出塁率(.447)を記録し、日本シリーズでも第5戦でサヨナラ2ランを放つなど、チームの26年ぶり日本一に貢献している。かねてからメジャー志向があった吉田は「自分の夢として、ずっとあった。ずっとハイレベルでやりたいと思っていた。チャレンジしたい」と選手として最も脂が乗り切った時期の挑戦を望み、ポスティングでレッドソックスに移籍した。

 新庄剛志・現日本ハム監督も、阪神最終年(2000年)は、3年連続最下位に沈んだチームにあって孤軍奮闘。4番打者として打率.278、28本塁打、85打点とキャリアハイの成績を残すと、阪神の5年総額12億円の好条件を断り、契約金30万ドル(当時のレートで約3300万円)、年俸20万ドル(同2200万円)プラス出来高50万ドル(同5500万円)の3年契約でメッツにFA移籍している。

 今季の村上がどんな成績を残し、メジャーへ旅立っていくか、注目される。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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