異例のソフトバンク入団辞退 “大型右腕” 古川遼の決断に他球団スカウトは「どこかでコミュニケーションの行き違いがあったのでは」
「大学で力をつけてから、というのは良い判断だった」
今回の古川が下した決断について、プロ側はどう見ているのだろうか。前出のスカウトはこのように話してくれた。
「2年生までは、我々(スカウト陣)の間でも話題になっていなかったのですが、秋の東京大会が終わってから、冬にかけて成長しているとの話を耳にして、練習を見に行きました。確かに上背があって、投げ方にも悪い癖がない。『素材としては面白い』と思いましたね。ただ、体つきもまだまだ高校生の中でも細い方ですし、スピードは、ほとんどの球が140キロに届かないくらいでした。日本学園は強豪チームではなく、練習量も多くない。それを考えると、いきなりプロの世界に飛び込むことは、少し難しいと思いましたね。他の球団も多くはそう判断していたようで、最後まで(指名の)対象として考えていたのは、四軍まで持っているソフトバンクだけではないでしょうか。個人的には、大学に行って力をつけてから、もう一度チャレンジすることは良い判断だったと思います」
筆者も、春先に古川の評判を聞き、春の東京都大会のブロック予選で実際にピッチングを視察した。ストレートの最速は137キロ。そのほとんどが130キロ台前半だった。春先の調整段階とはいえ、ドラフト候補として目立つ球速ではない。
もちろん、“光るモノ”はあった。6回を投げて与えた四死球は0で、身長190cmの長身でありながら、コントロールが大きく荒れるシーンはなかった。試合後、本人に話を聞くと、夏に向けてスピードはもちろん、全体的なレベルアップを目指したいとはっきり話す姿にも好感が持てた。
投稿は多くの野球ファンの共感を得た
しかしながら、夏の西東京大会を制した早稲田実を相手に5回戦で敗れたため、上位進出はならず、古川本人は大会を通じて、投球イニングを上回る奪三振を記録するも、スカウト陣の評価を上げるには至らなかった。前述したスカウトのコメントにもあるように、「現段階では指名を見送るのが妥当」という球団が大半を占めていた。
育成ドラフトとはいえ、実際に指名を受けながら、自分の立ち位置を冷静に把握し、高卒でのプロ入りを見送る結論を出した点は、古川の将来にとって、大きなプラスだろう。本人のXへの投稿にもあるように、ソフトバンクの恵まれた環境には当然、惹かれる部分が大きかったと思われるが、元々感じていた悔しさを忘れることなく、入団辞退を決断したことが今後の成長の原動力となるはずだ。自らの言葉でしっかり発信する古川の姿勢も、多くの野球ファンの共感を得ている。
今回の入団辞退で、今後、さらに古川に注目が集まるのは間違いない。大学野球で鍛えて、大きく成長した姿となって再びドラフト戦線に浮上してほしい。
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