気が付けば来オフはまたWBC… “4番不在危機”で井端監督はどう対処するのか
就任初の大会で見せた周到さ
そもそも、昨年10月に侍ジャパンのトップチームの指揮官に就任した井端監督は当初、“つなぎ”のイメージが強く、契約形態も「1大会ごとに更新」とされていた。国際大会の中でも注目度が桁違いの次回WBCの監督には、元巨人監督の高橋由伸氏、ソフトバンク監督として日本一に5度輝いた工藤公康氏、2009年の第2回WBCで優勝に導いている前巨人監督・原辰徳氏らの名前が浮上していたものだ。
しかし、プロ球団を指揮した経験のない井端監督は昨年11月、就任後最初の大会である「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」に4戦全勝で優勝。韓国との決勝は2-2の同点でタイブレーク方式による延長戦にもつれ込んだが、1点ビハインドの10回裏無死二塁の場面で、当時も打撃好調だった森下の代打に、古賀悠斗捕手を送る“勝負手”を打った。古賀は緊張度100%の場面で送りバントを決め、逆転サヨナラ勝ちにつなげた。実は大会開幕前、宮崎で行われた直前合宿初日の段階で「タイブレークで代打バント(の可能性)もあるよ。練習しておいて」と古賀に声をかけていたという用意周到さがあった。
前出のNPB関係者はこう称賛する。
「それに、井端監督には小学生世代の侍ジャパンU-12代表の監督を務めた経験がありますし、今も本人の強い希望で、トップチームとU-15代表の監督を兼務しています。ここまで若い世代に目を配り、長い目で侍ジャパンのことを考えている人は他にいませんよ」
驚くべき慧眼
今年3月に京セラドーム大阪で2試合開催された「日本 vs 欧州代表」には、トップチームに明治大・宗山塁内野手、関西大・金丸夢斗投手、青山学院大・西川史礁外野手、愛工大・中村優斗投手の大学生4人を異例の大抜擢。宗山は怪我で出場を辞退したものの、練習には参加し、結果的に4人とも今年のドラフト会議で1位指名された。
「驚くべき慧眼ですが、こういう結果を出せるのも、井端監督が普段、小学生からプロに至るまで、あらゆるカテゴリーの選手たちを積極的に視察して回っているからですよ」(前出のNPB関係者)
こうして評判を上げた井端監督は、「1大会ごとの契約」だった当初のルールが一転、プレミア12開幕前の10月に、次回WBCまでの続投が決まった。前出の球界OBは「お陰で、立浪和義前監督の有力な後任候補と考えていた中日は当てが外れ、迷走の末、井上一樹2軍監督の昇格に落ち着きました」と苦笑する。
成長盛りの選手を見る目の確かさで次回WBCでの指揮権を勝ち取った井端監督。本番では誰を打線の中軸に据えるだろうか。
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