元乃木坂46の伊藤万理華、障害当事者ら出演 NHKの“脱・感動ポルノ”は成功するか

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障害者のクオータ制を提案した藤谷編成部長

 編成部長の藤谷は、企画がより「多様性」にふさわしくなるよう、出演者の割合に数値目標を設けようという一種のクオータ制を提案する。「たとえばやな、このパーセントというタイトルにちなんで、出演者の10%に障害者を起用する。これを大々的に打ち出すっていうのはどうや?イギリスのBBCでもこういう数値目標を掲げてやっとるやろう?それに倣って、ちゅうことで…」

 BBCのドラマが、街中のシーンでも「障害者がいる光景」を意識してもらえるよう、障害者を登場させていた話は知られている。

 そして藤谷部長はこう口をすべらしてしまう。

「あらゆる人に平等に機会を作ろうっていう話や。今回、君の企画が通ったんもそれと同じことや」

 ドラマの企画が通ったのは内容がよかったからだと思っていたが、“若い女性”の企画というジェンダーバランスへの配慮もあった。そう聞かされて未来は複雑な心境だった。

出演者も障害をもった人が多数 ヒロインは「片翼の小さな飛行機」のヒロイン

 障害者を起用するという点では、本作にも重なるものがある。NHKは「パーセント」の出演者をオーディションで募集し、「障害」「持病」のある人を条件とした。100人を超える応募があったという。

 最終的に未来と共にハルはドラマに出演することを了承するが、ハルを演じる和合由依も、2年前の東京パラリンピックの開会式で車イス姿の「片翼の小さな飛行機」を演じた若者だ。

恋人と「感動ポルノ」「上から目線」で激しい口論

 5月18日の第2話では、新任の編成部長・長谷部由美(水野美紀)から“根本的に人間を描くという意識が欠如している“と未来は厳しい指摘を受ける。

 未来は、恋人の町田龍太郎(岡山天音)と同棲している。龍太郎は学生映画で脚本賞を獲ったこともあり、才能は一目置かれながらも、就職せずにバーでバイトをするフリーターだ。

 未来の企画書を見た龍太郎の発言がきっかけで、2人は激しい口げんかをしてしまう。

(龍太郎)「『女性や障害者、マイノリティです。うちらは差別されてまーす』みたいなこと言われても、そんな説教されたないから、こっちは……」

(未来)「説教…?」

(龍太郎)「説教やろ。こんな『上から目線』でもの作って……。それはみんなテレビを見んようなるわ」

 こちらも一生懸命にドラマを作っている、障害のある素敵な俳優も多くいる、という未来の反論に対しても、

(龍太郎)「それ…、障害者やのに頑張っている…から素敵なんやろ?そんなの『感動ポルノ』や。やばいで、未来。テレビの世界につかりすぎて、感覚おかしなってるちゃう?」

 龍太郎が口にした「感動ポルノ」とは、障害者が「感動」のために消費される存在になっていることを痛烈に批判した、オーストラリア人ジャーナリストのステラ・ヤングの言葉だ。2016年、日本テレビの恒例番組「24時間テレビ 愛は地球を救う!」の裏番組としてNHKが「バリバラ」を生放送して大きな話題になった。日テレで「困難に見舞われてもけなげに頑張る存在」として描かれていた難病患者の女性が、NHKでは「本当の自分の姿とは違う」と本音を暴露したからだ。

 その後、未来がハルとの距離を縮めていく展開となる。自分の弱さや、龍太郎との口げんかの顛末などまで打ち明けるようになる。企画書は改善されていくものの、編成部長のOKは出ない。

「それはドキュメンタリーでもできることです。あなたが視聴者だとしてこれを観たい? やり直し!」

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