配球に工夫がない、「イップス説」も流れて…大城卓三捕手は弱点を克服できるか

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打てる捕手の不在

 巨人がマツダスタジアムでの広島3連戦に全敗した5月19日、「非情の降格人事」が発表された。その日に先発した高橋礼(28)、秋広優人(21)、佐々木俊輔(24)、山瀬慎之助(23)を二軍に落とすというのだ。

「阿部慎之助監督(45)は4失点した高橋を1イニングで交代させました。試合後、初回先頭打者に出した四球を指して、『あの四球が全て。味方が3点取った後、あの四球でいけるんじゃないかって向こうに思わせてしまった』と怒っていました」(スポーツ紙記者)

 通常、実績のある先発投手なら、立ち上がりに失点してもある程度のイニングは投げさせてもらえる。高橋は前回の登板でも負け投手になったものの、「6回3失点」と先発としての責任は果たしていた。「2イニング以降の続投」を許さなかったのは阿部監督の厳しさだろう。

「捕手も途中から小林誠司(34)から山瀬慎之助(23)に代えています。阿部監督は『流れ』というワードをよく口にします。試合の主導権を相手チームに握られそうになったり、空気が傾きかけていたりする時は、バッテリーごと交代させてきました。今回は捕手の喜多隆介(25)、郡拓也(26)らを一軍に昇格させました。捕手のポジション争いが激化しそうです」(前出・同)

 今季、マツダスタジアムではまだ1勝も挙げていない(4敗2分け)。DeNA、広島と対戦した5月中旬の一週間の成績は2勝3敗だ。上昇気運に乗れない原因は「打線の低迷」と、バッテリー間のリズム。特に打線低迷となれば、「打てる捕手」である大城卓三(31)の不在が真っ先に上がるはずだ。

「大城は二軍降格を通達されたとき、阿部監督と話し合っています。大城本人から『大丈夫です』と言って来ない限り、昇格はないそうです」(球団関係者)

 大城の一軍登録が抹消されたのは、5月8日だった。昨季は自己最多の134試合に出場し、規定打席にも到達した。打率2割8分1厘、本塁打16、打点55。侍ジャパンのメンバーにも選ばれ、「打てる捕手」として正捕手の座を掴んだはずだった。しかし、二軍落ちするまでの34試合でスタメンマスクを被ったのは僅か14試合で、打撃面でも20打席ノーヒットと大不振に陥っていた。

 攻守にわたる不振の原因はどこにあるのか。

「大城のリードについてダメ出しがされた一例を挙げると、4月3日の中日戦です。先発のメンデスが4失点し、巨人は2対5で敗れました。敗因は下位打線に捕まったことと、2アウト後に打たれたソロホームランです。下位打線に捕まったり、あと1アウトで一発を食らったり……彼のリードに問題があったと言われても仕方ありません」(前出・同)

正捕手の座を巡って

 どの球団も、試合前にスコアラーが集めてきた情報を元に投手コーチやバッテリーコーチ、そして先発投手と捕手で「配球」を話し合う。相手メンバーで打撃好調な選手がヒットにした球種は何かなどの確認から入り、先発投手の球速、持ち球などから配球を決めていく。プロ同士の対決なので1巡目と2巡目に同じ配球は用いない……といった内容を確認するのだが、試合が始まると、スコアラーの解析に、捕手のその日の分析が加えられる。しかし、大城のリードには、その分析が見られないという。つまり、スコアラーの言った通りに配球するというのだ。

「彼の場合、性格の問題もあると思います。試合前のミーティングではスコアラーの報告を素直に聞いています。でも、経験豊富な捕手になると、翌日の先発投手がタテの変化球やフォークボールを得意としていたら、前日の試合で相手チームにその球種をあまり見せたくないので『今日はこの球種を使わないようにしたいのですが』と意見を言ったり、提案をしたりします。でも、大城が何か意見することはほとんどないそうです」(前出・同)

 投手がマウンドに上がった後、「変化球が、いつもの曲がり方と違う」というケースもある。また、外角の変化球が苦手な打者の場合、苦手コースばかりを攻めれば、逆に相手はそこにヤマを張って来る。捕手は打者の動作、ボールの見送り方などからそれらを判断し、ウラをかくこともあれば、様子見の投球を挟んでウラのウラをかくこともする。

「例えば、小林はスタメン出場でなかったときも、試合中、味方バッテリーの配球を見て、『自分ならこういう配球もしますが、どう思いますか』と前任・原政権下の歴代投手コーチ、バッテリーコーチに質問していました。その姿勢は現在の実松一成バッテリーコーチ(43)や、内海哲也投手コーチ(42)に対しても変わりません。今季、小林が正捕手争いに帰って来られたのは、こうした努力の積み重ねでしょう」(前出・同)

 攻守交替で味方外野手のキャッチボールの相手を、小林や同じく捕手の岸田行倫(27)らが務めるケースも多い。単なるウォーミングアップではなく、グラウンドに出ることでナイトゲームの照明に「眼」を慣らすためでもあるという。途中出場するとなったとき、変化球を後逸しないためだ。

「リリーバーのブルペン投球のボールを捕ったり、ベンチとブルペンを往復し、味方投手の好不調を見極めたりもしています。ただ大城の場合、先発出場がないときは代打としての準備があるので、こうした準備ができないこともあります」(前出・スポーツ紙記者)

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