ホームランのはずがドームの天井に阻まれて「3打席連続アウト」…あまりに不運すぎた選手列伝

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繰り返された“天井アウト”の悲運

 ドーム球場に邪魔され、3日間で本塁打を2本も損したのが、西武時代のカブレラである。

 2004年9月3日の日本ハム戦、2対2の延長10回2死二塁、カブレラは左越えにあわや決勝2ランという大飛球を放ったが、特別ルールで定められた「フェア地域の天井の2列目から後方」の約20メートル手前の天井に当たったことから、インプレーとなり、落下してきたボールを島田一輝がキャッチ。左飛でスリーアウトチェンジになった。

 実は、この日のカブレラは、8回にも三塁側天井に当たる三邪飛に倒れていた。三邪飛はともかく、決勝2ランが幻と消え、試合もサヨナラ負けとあって、カブレラは「完璧な当たりだったのに、あり得ない。ルールを考え直してほしい。クレージーデーだ」と怒り心頭。伊東勤監督も「2本目は(天井がなければ)150メートルくらい飛んでいる。あと味の悪い試合だった」とボヤキが止まらなかった。

 さらにご難は続く。翌4日も、カブレラは1打席目に内野付近の天井を直撃する遊飛に倒れ、2日がかりの3打席連続“天井アウト”の不運に泣く。

 6回の3打席目に左越えに21号ソロを放ち、「バットの先だったが、天井に当たらなくて良かった」と胸をなでおろしたカブレラだったが、5日の試合でも、4回の打席で打球が左翼線寄りの天井を直撃し、またしても左飛に……。札幌ドームとのあまりの相性の悪さに、カブレラは「ドーム球場でなければ、間違いなく左翼席に入っていた。3日で2本の本塁打を損して気分が悪い」とぶんむくれだった。

「プロ野球記録更新です」と聞いてガックリ

 NPB史上初の1試合5三振を記録したのが、阪神時代の若菜嘉晴である。

 1979年5月29日の大洋戦、7番捕手で出場した若菜は、2、4、5回と平松政次に3連続三振を喫すると、8回1死の4打席目も斉藤明雄に三振に打ち取られた。

 とはいえ、9回に打順が回ってくるには、最低でも5人が出塁しなければならず、この日は4打席で終了と思われた。

 ところが、1点を追う9回、まるでマーフィーの法則が働いたかのように猛虎打線が火を噴く。2四球で2死一、二塁としたあと、4番・竹之内雅史が左越えに逆転3ラン。さらに中村勝広の二塁打を挟んでスタントンがバックスクリーン直撃のダメ押し2ラン。この結果、2死無走者で若菜が5度目の打席に立つことになった。

 さすがに三振だけは絶対避けたいと必死にバットを振ったが、2球続けてファウルのあと、斉藤の3球目を空振り三振。9回以内ではNPB史上初の1試合5三振となった。

 試合後、若菜は「5三振なんて、誰かほかにいるの?」と番記者たちに尋ねたが、「プロ野球記録更新です」の答えに、「えっ、やっぱり」とガックリ。それでも「まあいいや。これで僕の名前も球史に残る」と自らを納得させていた。その後、一昨年5月のソフトバンク・柳田悠岐まで20人が達成したが、若菜は第1号として名を残している。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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