【リニア問題】知事は私たちが思っていないことを発言している…気が付けば、川勝知事の方針に異を唱える地元首長が続出 再び暴言で窮地に拍車

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川勝知事は国民の代表!?

 翌26日、川勝知事は定例の記者会見に出席。さっそく記者から染谷市長の発言を巡って質問が飛んだ。

「川勝知事が染谷市長の発言に真っ向から反論することはありませんでした。とはいえ、『ボーリング調査の推進』と『湧き水を戻す必要はない』という2点は、流域首長の『総意』としてJR東海に伝えられたとメディアが報じたことは問題視し、『自治体ひとつひとつに確かめる必要があると思っている』との考えを示しました。また『流域の代弁者ではない』という染谷市長の発言を受け、中日新聞の記者が『知事は誰を代表して発言しているのか』と問うと、知事は何と『南アルプスの自然を保全することは国策であり、それは国民の総意だ』と答えたのです」(同・記者)

 国会議員でさえ、衆議院の小選挙区で当選した議員は選挙区の代弁者に過ぎないという考えもある。日本全国の有権者が投票する選挙は参議院の比例区があるが、川勝知事は県知事だ。県民有権者の付託は受けていても、国民の代表ではない

「川勝知事は、染谷市長の発言には『本当に流域首長の総意なのか?』と疑り深く対応していると言わざるを得ません。ところが、ご自身は何とも軽く『国民の総意』という表現を使ってしまうのです。実は知事、リニア中央新幹線の工事と伊豆縦貫道の工事への対応は全く違っています。地元ではダブルスタンダードとして知られています。今さら『国民の総意』という発言が飛びだしても、驚くには値しないのかもしれません」(同・記者)

 過去から現在までの流れを振り返ってみると、川勝知事の「リニア工事には絶対に反対」というスタンスから距離を置く首長が徐々に増えてきたことが分かる。

「染谷市長が『静岡県内でもボーリング調査を行うべき』と定例記者会見で発言し、掛川市の久保田崇市長も賛意を示したのは2022年の11月のことでした。翌23年の11月には袋井市の大場規之市長や牧之原市の杉本基久雄市長も調査に理解を示しました。決定的な転換点となったのは、22年4月にJR東海が田代ダム案を示したことでしょう」(同・記者)

昨年3月の時点で“温度差”

 リニアの静岡工区では工事期間の一時期である約10か月の間、トンネル工事で発生した湧き水が山梨県側に流れていくことが予想されている。

「山梨県側から県境を越えて工事を進める先進坑が、静岡県側のトンネルと繋がって水をポンプアップできるようになるまでの期間が約10ヵ月と想定されているのです。この間に生じる湧き水の量は500万トンから300万トン程度と考えられています。解析では田代ダムで取水を制限しなくても、大井川中下流域の水量は減りません。しかし一般論として解析には不確実性が伴うので、JR東海が計画しているものです。23年3月に開かれた『大井川利水関係協議会』で流域自治体の首長は田代ダムにおける取水制限の実施に期待を示しました。一方、県は慎重な姿勢を崩さず、その“温度差”は多くのメディアが報じました」(同・記者)

 今年3月7日、染谷市長は市議会で国土交通省の調査結果を紹介した。リニアが開業すれば東海道新幹線の県内駅への停車回数が増える可能性があり、市内にも企業の新規立地や観光交流拡大などが期待できると説明。その上で、ボーリング調査とモニタリングで工事のリスク低減を図る考えを示した(註)。

 一方、川勝知事は今回の“暴言”に批判が相次いでいる。Xに「川勝知事」を入力して検索してみると、発言を問題視する投稿が次から次へと表示される。果たして“国民”が支持するのは染谷市長なのだろうか、それとも川勝知事なのだろうか。

註:「県の姿勢 正しく伝わっているとは言い難い」 島田市長、市議会で発言(中日新聞電子版・3月8日)

デイリー新潮編集部

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