【能登半島地震】「来ないで!」と言われる被災地で、各局のキャスターは何を語ったのか 群を抜いていた元NHKアナ

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 まだ不明者も多いなか、能登半島地震の被災地では道路が寸断されるなど、これまでの大災害と比べても群を抜いて状況が悪いことがテレビの映像を見ていても伝わってくる。そうしたなか、各局のニュース番組や報道番組、ワイドショー・情報番組からはメインキャスターが現地に入り中継レポートを繰り返している。

 政治家がぞろぞろと大名行列を成して現地入りすることに加え、大手メディアがこぞって被災地で取材することによって支援活動が滞る構図は、これまでの災害時にも批判の対象になってきた。

「番組の顔」であるキャスターが入るからには、一記者がレポートするのではとても及ばないほど、伝えられる“内容”や“成果”があるべきだと思う。ではキャスターたちは何を語ったのだろうか。キャスターたちはそれぞれ言葉のチカラを発揮できたのだろうか。【水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授】

まっさきに現地に飛んで、早い時期の“トイレ事情”を伝えたTBS井上貴博アナ

 大地震が発生して以降、特番などでキャスターを務め、今回の震災でいちやく「TBSの顔」になった感があるのが、夕方のニュース「Nスタ」のキャスターを務める井上貴博アナだ。1月4日には現地の石川県珠洲市から生中継をしていた。

 前夜から取材して2つのことに気がついたと語っていた。「半島で起きた地震の難しさ」と「日本海側で起きた地震であることのハードル」だという。

「半島だと三方を海に囲まれているので高台もなく、どうやって避難するのか困難」と述べた後、井上アナは「陸路の難しさ」も強調した。東日本大震災を取材した経験から「東日本大震災の時も数多くの道路が寸断されていた」が「まだかろうじて迂回ルートがあった」。ところが今回は半島で起きているため、そもそも道路の数が少ないので迂回ルートを使えず「陸路で物資を運ぶことが大変高いハードルになっている」と説明した。

 一方、海から物資を運ぶことも「日本海側は遠浅になっていて数メートル海底が隆起したと言われていて接岸が困難」という珠洲市の状況を伝えた。

 また、取材者として観察したレポートをした上で、他にも被害が出ている場所があると話し「数多くの被害が出ているので私たちがお伝えできるのはごく一部でしかありません」と視聴者に報道しきれない被害にも目を向けるように促していた。

 井上アナのような、テレビに日頃から出ているキャスターが取材で活きるのは、被災地でも信頼を得て話を聞くことができる点だ。井上アナは、家が潰れ、がれきの下にいるはずの父親を捜す家族に取材していた。

 トイレへの問題意識を随所でうかがわせているのも印象的だった。「取材していると、東日本大震災以上と言っても過言ではないほど、トイレ事情についてはかなり劣悪になっています」と、この夜の中継で問題意識を表していた。

 翌5日も珠洲市から生中継し、前日とは異なりレスキュー隊が活動する映像を放送。井上アナは、海に近い地域の住民が、どのように津波から避難したのかを伝えていたが、この日も井上アナが強調したのはトイレ問題だった。

「当然ですけど水がない、電気がない、ライフラインがない、ダメとなりますと、トイレ問題は大変深刻です。他の災害以上に仮設トイレの数が圧倒的に足りないということを感じます。トイレ問題は災害関連死、治安の悪化、感染症の拡大につながります、水を飲むのを控えるという方が増えると血栓ができてしまう。災害関連死につながってしまうおそれがある」

 また「Nスタ」では、南波雅俊アナも別の自治体に入って取材していた。2日間にわたって3つ以上の自治体の被災状況を伝えていたことは、他の番組以上の力の入れ方だったと言ってよい。

 井上アナは5日の中継の最後をこう締め括った。

「私たちが日々、お伝えしている情報は全体の被害のごく一部にすぎません。より多くの人が広い範囲でさらなる支援を待っていらっしゃる。そのことも付け加えておかせてください。震災は現在進行形。今も続いています」

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