立浪中日、今年のドラフト戦略に「ビジョン」はあったのか? 「フロントの責任逃れ」を指摘する球団関係者も

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“内野手”偏重

 球団史上初となる2年連続最下位に沈んだ中日。来シーズン以降の巻き返しを目指して、10月26日に行われたドラフト会議では支配下で6人、育成で4人の合計10人の選手を指名した。個々の顔ぶれを見れば楽しみな選手ばかりで、この中からチームの中心となる選手が出てくることも十分に期待できる。しかしながら、チーム事情を考えると、いくつか疑問点が残った。【西尾典文/野球ライター】

 1位では、野手の一番人気となった度会隆輝(ENEOS、DeNA1位)を外し、最速153キロ右腕の草加勝(亜細亜大)を指名した。元々は投手中心のドラフト戦略だったと言われており、この方針転換は理解できる。

 ただ、続く2位で津田啓史(三菱重工East)、3位では辻本倫太郎(仙田大)と立て続けにショートの選手を指名した。昨年のドラフトで、村松開人や浜将乃介、田中幹也、福永裕基と二遊間の選手を4人指名しているにもかかわらず、今年もまた、高い順位で似たタイプの社会人と大学生の選手を重ねてきた(※浜は今オフに外野手にコンバート)。これに加えて、同じ年の育成ドラフトで獲得した内野手の樋口正修は今年7月に支配下登録されている。

 今季途中に高松渡がトレードで西武へ移籍し、ベテランの福田永将と堂上直倫が今季限りで現役を退いたほか、29歳の溝脇隼人が戦力外通告を受けたことで、内野手の数が減ったから、“内野手偏重”のドラフトは仕方がないという見方もある。

 しかし、筆者は、23歳前後で二遊間を守れるチャンスメーカーばかりを揃えた点に、やはり疑問を持っている。将来の中軸候補として期待できる内野手は、今季13本塁打を放ち、45打点をあげた石川昂弥しかいないという寂しい状況だからだ(※石川の本職はサードやファースト)。

立浪監督の意向

 前出の津田は、横浜高校時代からショートで活躍していた選手で、社会人でも早くから公式戦に出場しているものの、それほど目立った実績を残しているわけではない。社会人野球で最も大きい大会である都市対抗と日本選手権では、10試合(3試合は代走で出場)に出場しヒットは5本、打率.208という数字に終わっている。ショートの守備には安心感があり、身長181cm、体重88kgの大型選手で脚力を備えた好素材といえるが、2位という上位で指名されると予想していた他球団を含めた球界関係者は少なかった。

 そういったことを踏まえると、中日の2位指名は、ウェーバー順(順位が低いチームから優先に指名していく形)で最初の指名であり、まだ力のある投手やチームの課題である長打力のある打者が残っていた中で、なぜ津田を選んだのだろうか。

 もちろん、冒頭でも述べたように、楽しみな選手は多く、揃って力を発揮することも考えられるだけに、結果的に数年後に振り返った時に良い指名だったという評価になる可能性もある。

 ただ、より球団として深刻な問題点だと考えられるのが、今回の指名にいたった経緯である。

「元々スカウト部の総意としては、最初の指名で大学生の投手を推していたそうです。ただ、最終的な決定権は立浪(和義)監督にあり、打撃を高く評価した度会選手になったと聞きました。また、ショートの選手を指名したことについても、立浪監督の意向が強かったようです。今季、ショートを守ることが多かった龍空選手に対して物足りなさがあるようで、何とか自分で新たなショートの選手を鍛えたいという意向が強かったようですね」(中日の球団関係者)

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