大流行「インフルエンザ」の裏で深刻化する「薬不足」 臨床試験大詰めで注目を集める米モデルナ社「mRNAインフル・コロナ混合ワクチン」本当の評判

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 インフルエンザの流行拡大が止まらない。感染者の急増とともに、全国の小中学校では休校などが相次ぎ、今冬に新型コロナとの同時流行「ツインデミック」が起きる可能性も指摘されている。深刻化する薬不足の影響も相まって「流行の加速化」が懸念されるなか、米モデルナ社が開発中の新型「混合ワクチン」に期待が集まっているというのだが――。

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 厚労省によると、インフルエンザ感染者数は約9万7000人(10月23日~29日の定点報告数)と、10週連続で増加。国立感染症研究所の推計では、全国の患者数はすでに約67万4000人に達するという。

「感染者が増え始めたのは8月下旬頃からで、現在の感染者数はインフルエンザが流行した年のピークに当たる12月下旬から1月上旬と同じ水準です。休校や学級閉鎖となった小中学校も4000校近くにのぼり、異例の流行スピードに厚労省も警戒を強めています」(全国紙厚労省担当記者)

 例年よりも早くインフルエンザの流行が拡大している理由について、東京歯科大学市川総合病院(呼吸器内科部長)の寺嶋毅教授がこう話す。

「マスクの着用や手指の消毒、“3密”回避など、コロナの感染対策が広く感染症予防へと繋がり、コロナ禍の3年間でインフルエンザ感染者も激減しました。しかし長期間、流行がなかったことでインフルエンザに対する免疫が弱まったこと、またコロナ禍が明けてヒトの往来が増え始めたことなどが流行の背景にあると考えられます」

 一方、インフル患者の急増などで需要が伸びている反面、医療現場では「薬不足」が深刻化しているという。

臨床試験は最終局面

 すでに咳止めや感冒薬、糖尿病薬、抗うつ薬などが「品薄」状態になっており、インフルエンザ治療薬のタミフルなどに波及することへの不安が広がっている。

「幅広い薬の納品が滞っている最大の理由は、供給元のジェネリック(後発薬)メーカーにおいて“試験データ改ざん”などの不正が相次いで発覚し、業務や供給の停止処分を受けるメーカーが続出したためです。患者の急増でインフルエンザ治療薬の需要も急拡大するなか、このままではタミフルなどの供給にも支障が出る可能性があるとして、厚労省も薬の安定供給に向けた対策に本腰を入れ始めています」(前出・厚労省担当記者)

 そんななか、複数の医薬品メーカーが開発に乗り出しているのが、一度打てばインフルエンザと新型コロナのいずれにも効果がある「メッセンジャーRNA(mRNA)混合ワクチン」だ。第一三共や米ファイザー社が開発を表明済みだが、現在、先行しているのが米モデルナ社という。寺嶋教授が解説する。

「モデルナは10月4日、初期の臨床試験で混合ワクチンの安全性や有効性が確認できたと発表し、すでに第1相と第2相の臨床試験を終えている段階にあります。残る第3相の臨床試験は年内にも始まる予定で、承認に“もっとも近い位置にいる”と言われています」

 ただし、モデルナ製「混合ワクチン」については、期待とともに不安の声も上がっているのだ。

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