「失業率は70%」「子どもの20~25%は治療が必要なレベル」 ガザの苦難の実態とは
テロリストが笑いながら…
「長年、ガザは封鎖状態に置かれ、実質的にイスラエルによって“占領”されています」
とは、ガザ地区を長年取材してきた、ジャーナリストの土井敏邦氏。
「日常的に住民の自由と人間の尊厳を奪う“占領”は、間違いなく暴力。イスラエルの“占領”はまがいもなくテロといえます」
と厳しく指摘する一方、ハマスについても断罪する。
「彼らの行為も紛れもなく『テロ』『虐殺』です。ハマスが『奪われた故郷の回復』『占領との闘い』を名目に行った今回のようなテロは、パレスチナ人への国際世論の支持を失わせた。ガザの民衆が置かれた状況を改善させることには決してつながりません」
実際、ハマスはイスラエルで2700人以上をあやめた上に、レイプしたとの報道もある。米国の公共放送PBSが、襲撃されたイスラエルのコンサート会場の生存者2名に取材したところによると、
〈テロリストが私たちに向けて発砲し、目の前で多数の人が殺されました〉
〈私たちは茂みの中に隠れました。多くのテロリストが私たちの周りを歩き回り、女の子たちをレイプしました。そしてその後ナイフで殺したり、逆に殺したあとレイプしていました。彼らはずっと笑っていました〉
土井氏が続ける。
「『ハマスが数千発のロケット弾を放った』というニュースに真っ先に浮かんだのは“ガザがこれほど貧困であえいでいる中、どこにそんな資金があったのか”という驚きでした」
14年にもイスラエルはガザを爆撃しているが、
「その最中“ハマスは私たちのために闘ってくれている”と住民は私のインタビューに答えました。しかし、1年半後には“ハマスにだまされた”と失望と怒りをあらわにした。ハマスと一般民衆とは大きく乖離しています。ロケット弾を撃ち込めば、イスラエルはその何百倍の報復をすることはハマスも熟知しているはず。その最も甚大な被害を受けるのは民衆なのです」
「そこにあるのは諦念だけ」
イスラエル、ハマス双方に虐げられるガザの民。
「ガザはいわば、周囲の“捨て駒”のような存在にされてしまっているのです」
と『ガザの空の下』の著書がある、ジャーナリストの藤原亮司氏も言う。
「彼らにはイスラエルだ、ハマスだというより、選択肢がない。諦めしかない。その中でどうやって自分たちが生きていくかということしか考えていません。そこにあるのは諦念だけといえます」
そうした存在がまた戦に巻き込まれ、流浪の日々を強いられる。不条理としか言いようがない。
放送大学名誉教授の高橋和夫氏に今後の見通しを聞くと、
「ハマスを殲滅(せんめつ)させないとイスラエルの現政権は持たない。今後、大規模な戦力でガザの制圧に動くはずです。問題はその後の統治。誰が治めるにしろ、困難を極めるでしょう。また、ハマスより格段に強いレバノンのヒズボラなどの軍事組織が参戦すると紛争はガザにとどまらなくなる。さらにそのバックにいるイラン、あるいはロシアが顔を出せば中東情勢はより混迷を極めることになる」
そこに神の救いは見えないのである。
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