インドは中国に代わる「期待の星」になれない…インフラ不足以外にも懸念すべき感染症が

国際

  • ブックマーク

Advertisement

インド経済は好調を維持する見通し

 国際通貨基金(IMF)は10月10日、2024年の世界の実質経済成長率は2.9%との予測を公表した。21世紀に入って成長率が3%割れになったのは5回だけだ。そのほとんどにリーマンショックや新型コロナのパンデミックなどの大きなショックが伴っていた。

 だが来年、再び3%割れになる可能性が生じているのは、世界経済を長年牽引してきた中国経済がゼロコロナ政策解除後も減速を続けると予想されるためだ。IMFは中国の実質経済成長率を2023年は5.0%、2024年は4.2%と、それぞれ下方修正している。

「5年後の成長率も3%前後にとどまる」と、IMFが世界経済の不調継続を予測する中、インドが中国に代わる「期待の星」として存在感を高めつつある。インド経済は好調を維持する見通しだ。IMFは、今年と来年の実質経済成長率を6.3%と見ている。

 人件費の上昇が続く中国が「世界の工場」としての魅力を失いつつあり、グローバル企業もその代替地(チャイナ・プラス・ワン)を探す動きを活発化させている。チャイナ・プラス・ワンの候補地として当初、東南アジアやメキシコなどが注目を集めていたが、最近、インドへの関心が急速に高まっている。

 中国を牽制する目的で米国が接近していることや、今年に中国を抜いて世界一の人口大国になることが予想されるなど、インドを巡る環境は良好だ。

経済好調でも外国資本の誘致に苦戦するインド

 インド政府が2014年に提唱した「メイク・イン・インディア(世界から投資を呼び込むことで製造業を発展させる)」戦略がようやく実を結ぼうとしている感があるが、筆者は「この戦略は有効と言えないのではないか」と考えている。

 大規模な市場があり、安定した経済成長を続けているのにもかかわらず、インドは外国資本の誘致に苦戦しているからだ。

 9月24日付日本経済新聞は「昨年度のインドへの海外直接投資(再投資利益と株式購入を含む)は前年度に比べて16.3%減少し、710億ドル(約10兆円)に落ち込んだ」と報じた。

 世界から好意的な視線を送られているのにこのような事態が起きているのは、インド側に問題があると言わざるを得ない。「外資誘致」と言いながら、厳しい経済規制は残ったままで、気まぐれな規則変更も日常茶飯事だ。

 最近の例を挙げれば、インド貿易監督当局は8月3日、ノートパソコン、タブレット、デスクトップパソコンの輸入を免許制にする新たな規則を発表した。新規則導入理由に関する説明はなく、当初は「即日実施」の予定だった。だが、延期を求める声が一斉に上がったため、翌4日に「約3カ月の移行期間を設ける」とした。

 移行期間は設けられたものの、アップルやサムスン電子などのグローバル企業が多大な影響を被る状況に変わりはない。

次ページ:G20で改めて露呈したインフラ不足

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。