旧日本軍「震洋」を彷彿とさせるウクライナ軍「水上ドローン」の威力 専門家は「”マスクさまさま”でしょうね」

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 ウクライナの水上ドローンがロシアに甚大な被害を与えている。8月5日、時事通信は「ロシア海軍揚陸艦が損傷 南部基地に水上ドローン攻撃」との記事を配信した。ロシア南部の都市ノボロシスクにはロシア海軍の基地がある。ロシアが占領しているクリミア半島からは車で約5時間という距離だ。

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 現地時間の4日、ノボロシスク基地にウクライナの水上ドローンが襲いかかった。ウクライナ保安庁の関係者がイギリスのBBCに提供した動画では、小さなボートがロシア海軍の軍艦に突入する様子が収められており、衝突した瞬間に映像は途切れた。

 アメリカのCNNは大きく傾き、軍港に係留された揚陸艦の衛星写真を報道。この揚陸艦は「オレネゴルスキー・ゴルニャク」だと見られている。時事通信は《昨年4月にロシア海軍黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を炎上・沈没させたのに続く戦果となる可能性がある》と報じた。

 さらに翌5日、ロシアの大型タンカーがクリミア半島とロシアに挟まれたケルチ海峡で爆発、航行不能に陥った。SNSなどでウクライナの水上ドローンがタンカーに突入する動画が拡散されている。

 先月17日には、ケルチ海峡のケルチ大橋で爆発が起こり、2人が死亡。CNN.co.jpは31日に配信した「黒海での反撃で活躍するウクライナ無人艇、開発の現場を取材」との記事で、ウクライナの国防関係者が水上ドローンによる攻撃であることを明かしたと伝えた。ケルチ大橋の爆破で、ロシアからクリミア半島への補給に影響が出ると見られている。

貧者の戦艦

 この記事ではウクライナ軍の秘密基地への立ち入りを許されたCNNの記者が、水上ドローンの試験航行に立ち会い、その一部始終を取材している。

 記事によると、水上ドローンは細身の船体で、長さは約5メートル。カヌーに似た印象を受けたという。操縦担当者はアタッシュケースを持ち、開くとマルチスクリーンのコントロールパネルに複数のレバーやジョイスティックが備え付けられていた。

 水上ドローンは最大300キロの爆発物を積むことが可能で、航行可能距離は800キロ、最高速度は時速80キロ。開発者はCNNの記者に「ロシアがここまで小型のドローンを突き止めるのは相当困難だ。なかなか見つけられない」と胸を張った。

 軍事ジャーナリストは「まさに“貧者の戦艦”とでも評せる兵器です。ウクライナの海軍は戦力的に弱小と言われています。だからこそ知恵を絞った成果は特筆すべきものがあります」と言う。

「太平洋戦争の戦史に詳しい方ならご存知かもしれませんが、旧日本海軍も同じ発想で兵器を開発しました。真珠湾を奇襲した際、特殊潜航艇による魚雷攻撃を実施。敗戦間際にはベニヤ板で作ったボート『震洋』に250キロの爆薬を積み、アメリカの軍艦に特攻させました。軍港の攻撃は、本来なら特殊潜航艇のように水中からがベストですが、それでは開発が大変なので、震洋のようなボート型の水上ドローンをウクライナ軍は考案したのでしょう」

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