駐日大使館に勤務する外交官の娘がドラッグストアで万引き 公安警察官に母親が泣いて頼んだこととは

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩み、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、万引きをして捕まった外交官の娘について聞いた。

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 勝丸氏が10年ほど前、公安部外事課で各国の駐日大使館との連絡・調整係を担当していた頃の話である。

「ある日、台東区にある警察署から連絡がきました。都内に住む外交官の娘がドラッグストアで万引きしたというのです」

 と語るのは勝丸氏。

「具体的な国名は申し上げられませんが、東アジアの外交官の娘でした。彼女は中学生で、リップクリームとハンドクリームの2点を万引きしたところ店員に見つかり、所轄署に通報されたのです。店に駆けつけた警察官が中学生に身分証の提示を求めたところ、学生証と外交官等身分証明票を出したので駐日大使館に勤務する外交官の娘だとわかりました」

外交官の家族も

 ウィーン条約によって、外交官には逮捕などの不可侵、刑事裁判や税金の免除などの外交特権が与えられている。

「あまり知られていませんが、実は外交官と同居している配偶者や23歳以下の子供にも外交特権があります。通常、クレジットカードと同じ大きさで写真付きの外交官等身分証明票を持ち歩いています」

 警察官は、万引きした中学生の同意を得て所轄署へ連行したという。

「中学生は自分に外交特権のあることを分かってなかったようで、警察官に言われるがままでした。一般の警察官も、家族に外交特権があることはまず知りません。ですが、外交官の娘ということで、私に相談してきたのでした」

 勝丸氏は、警察官から父親の外交官の名前を聞かされた瞬間、唖然としたという。

「よく一緒に食事に行く、友人の外交官でした。彼から娘さんのことも聞いていました」

 それから程なくして、件の外交官の妻から勝丸氏の携帯に連絡が入った。

「外交官と彼女の3人で食事をしたことがありました。その時彼女に『何か困ったことが起こったら、遠慮なく私に連絡してください』と伝えていたのです。彼女は『娘が万引きしてしまって……』と泣きながら訴えていました。『今、娘と警察署にいるので、助けてほしい』と言うので、すぐに警察署に向かいました」

 ドラッグストア側は、万引きの額が1000円にも満たなかったので、被害届は出さなかったという。

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