「年少扶養控除を復活させるべき」 産婦人科医・宋美玄が語る出生数減少の理由

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 100年後の2120年には日本の人口は5千万人を割るといわれている。なぜこの国の出生数は増えていかないのか。2人の子を持つ母親であり、産婦人科医として出産の“現実”を知り尽くす宋美玄氏(47)が語る。

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 出生数が減少している一番の原因は、20代から40代前半にかけての「産める世代」の女性が減っていることです。

 2016年に約98万人だった出生数がこの6年で2割以上減ってしまいました。この間、何が起きたかといえば、私のような氷河期世代、第2次ベビーブーム世代が40代後半に差し掛かり、出産可能ではなくなったことです。10年前だったら皆、産める年齢だったのに、私より下は毎年学年の人数が減っていく世代なので、出産可能な女性の数はこれからもどんどん減少していきます。

 政府は最近になるまで、危機感を持っていたとは言い難いと思います。私は2013年から、政府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」の委員として、団塊ジュニア世代が産める年齢のうちに思い切った政策を、と発言していましたが、結局有効な対策は立てられませんでした。あの頃にもっと何かできれば、と悔やまれます。

若い人に全く響いていない

 最近発表された、興味深い意識調査があります。「1more baby応援団」という公益財団法人が5月末に発表した調査で、全国の既婚男女約3千人に出産に関する質問をしたところ、2人目(を出産することへ)の壁が存在すると答えた人が全体の78.6%にのぼり、子どもを育てやすい国に近づいていないと回答した人が75.8%にもなりました。いずれも過去ワーストの数字だそうです。つまり、「異次元の少子化対策」は若い人に全く響いていないということになります。

 それもそうですよね。岸田政権は今年の4月から出産費用の一時金を42万円から50万円に増額しました。ただ、100万人に42万円配るのと80万人に50万円配るのでは、前者の方が総額が高くなるわけです。加えて、児童手当の所得制限を撤廃するといっても小学生の第1子だと月に1万円、給食費無料はうれしいけど、それで子どもを産もうとは思いません。議論の次元が低すぎる。出産適齢期の世代もそう感じているのではないでしょうか。

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