「新派」記念公演が… 猿之助事件で松竹が受けたダメージとは?

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 渦中の猿之助を巡る騒動は、いまだ決着のメドすら立たない。しばらくは捜査の行方を見守るしかなさそうで、猿之助の復帰は絶望的。興行主の松竹はドル箱スターの一人を失った格好だが、ほかにも頭痛のタネが……。

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 明治期に新たな演劇「新派」が登場すると、歌舞伎は「旧派」と呼ばれるようになった。新派は藩閥政治に批判的な自由民権活動家の“壮士”たちが運動を広めるために芝居を利用したのが始まり。戦後に松竹の傘下に入り、今年で創立135年という節目を迎えた。が、ここ数年来、興行面で苦戦が続いている。

 演劇記者が解説する。

「主な演目は静岡県熱海市の海岸に設置されている貫一・お宮像で知られる『金色夜叉』をはじめ、名ゼリフの“切れろ、別れろは芸者の時にいう言葉”が有名な泉鏡花作の『婦系図(おんなけいず)』、華やかな水芸がウリの『滝の白糸』など。古き良き日本の情緒と風情豊かな作品を演じるのが特徴です」

 俳優陣も豪華そのもの。

「新派劇の創始者である川上音二郎、女形として活躍した花柳章太郎、戦後の新派を支えた初代水谷八重子らは絶大な支持を集めました。が、ここ数年はファンの高齢化もあり、観客動員は下降の一途なんです」

ファン離れに追い打ち

 今月3日に東京・三越劇場で始まった135周年記念公演も評価はイマイチだ。

「演目は急死した金融業の男の本妻と愛人、そして妹の3人のバトルを描いた有吉佐和子の小説『三婆(さんばば)』です。舞台の初演は東宝系だったせいか、コロナ禍を経た2年ぶりの復活公演を楽しみにしていた多くのファンから松竹の“財産演目が見たかった”という失望の声が上がっているんです」

 とはいえ「三婆」は満席が見込める人気作。が、松竹関係者の表情は暗い。

「大黒柱の二代目水谷八重子は84歳で、波乃久里子も77歳。7年前にはテコ入れのために歌舞伎界から喜多村緑郎(54)=市川月乃助=と河合雪之丞(52)=市川春猿=が新派入りしましたが、新派の公演がない時は歌舞伎に“一時復帰”している。観客も少ないことから、年内の本公演はこれ以外に組まれていません」

 喜多村と河合は市川猿翁(83)=三代目猿之助・香川照之の父=の弟子に当たる。二人は昭和61年に猿翁が始めた「スーパー歌舞伎」で主役級を演じていた。

「ところが四代目猿之助は二人より年下。スーパー歌舞伎は彼を中心とする新体制に変わり、居場所を失った格好の二人は新派に転身を余儀なくされた。彼らは大役を任されてきたのですが、3年前に喜多村に女優の鈴木杏樹(53)との不倫が発覚。ファン離れに追い打ちをかけてしまった」

 そこに猿之助のトラブルが。松竹の苦難は続く――。

週刊新潮 2023年6月15日号掲載

特集「『猿之助』vs.『警視庁』 『自殺幇助で逮捕』後に『未成年性加害』捜査」より

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