岡田准一や阿部寛の存在感は抜群、はっきりしてきた「どうする家康」の弱点は?

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

シリアスなのかコメディなのかの境界線が曖昧?

 責任は古沢氏にあるわけではない。ドラマの基本は「1に脚本、2に役者、3に演出」とされるが、物語の全体像を考え、脚本化を依頼するのはスタッフ側なのだから。

 スタッフ側は“これまでにない主人公”をつくり上げたかったのだろう。家臣たちから支えられるリーダーだ。ワンマンタイプの上司が絶滅寸前の現代にも適っている。

 スタッフ側はそれによって若い視聴者も取り込みたかったのではないか。松潤らキャストの人選からもその意図を感じる。しかし、功を奏していない。T層(13~19歳)の個人視聴率は「鎌倉殿の13人」の約半分。過去に類を見ない大河なので、大河の岩盤支持層とも言える固定ファンの一部が離れてしまったようだ。

 NHKは1970年代、金曜午後8時台で斬新な時代劇を放送していた。ここから、故・早坂暁さんが脚本を書き、山口崇(86)が主演したコミカルな時代劇の傑作「天下御免」(1971年)も生まれた。

 山口が扮した主人公の平賀源内が熱気球に乗るなど、史実を気にしないブッ飛んだ時代劇だったが、視聴者は受け入れた。観た途端、史実に縛られないコミカルな作品であることが分かる作風だったからである。作品側と視聴者の間に暗黙の了解が、たちどころに成立した。

 一方、「どうする家康」はシリアスなのかコメディなのかの境界線が曖昧な部分がある気がする。これも、観る側が引き寄せられない一因なのではないか。

 緊迫したシーンが始まったかと思ったら、笑いを誘うシーンになる。シリアスなシーンは腰が折られる形になり、一方でコメディ部分はクスリとする程度で終わってしまう。勿体ない気がする。

 今後の物語が史実に基づくとすれば、「三河一向一揆」に加担して第9話で追放された本多正信(松山ケンイチ・38)が徳川家臣団に復帰する。家康を殺そうとした井伊直政(板垣李光人・21)も家臣団に入り、徳川家の重臣になる。一方で石川は出奔。豊臣秀吉(ムロツヨシ・47)の家臣となる。

 ドラマチックな歴史上の出来事が待っている。ただし、盛り上がるかどうかは松潤版・家康にかかっている。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。