陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか

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“陸上専門”だったヘリ

 これほどの幹部クラスが、1機のヘリ事故に巻き込まれてしまったわけだ。防衛省や自衛隊が衝撃を受けているのは当然と言える。

 それでは産経新聞の報道に戻る。記事から重要なポイントを引用しよう。

《事故機には緊急着水時に使用する「緊急用フロート」が装備されていなかったことが12日、陸自への取材で分かった》

《緊急用フロートは機体下部に装備し、緊急着水が想定されるときに空気で膨らませることで機体を浮かす装置。機内から脱出する時間が確保され、搭乗員の救命に役立つとされる》

《航空法施行規則は水上を30分以上または185キロ以上飛行するヘリに装備を義務付けているが、陸自関係者は「事故機は海上での飛行を主としておらず、安全に救命し得る最低限の装備で飛行していた」としている》

 陸上自衛隊のヘリは、海上での飛行を想定していない──こうした事実が明らかになり、ネット上では議論が盛んになっている。

 防衛省は18日、自民党の国防部会・安全保障調査会の合同会議で、事故機のフライトレコーダーが海上自衛隊や航空自衛隊のヘリとは異なり、洋上飛行を想定していない仕様だと明らかにした。

フライトレコーダーの問題

 フライトレコーダーは、機体の姿勢やエンジンの状態、高度や速度といったデータを記録する装置だ。事故の原因究明には、回収が必須と言っていい。

 だが、主要メディアのほとんどは、フライトレコーダーの回収が困難を極めていると報じている。例えば、テレ朝NEWSは19日、「陸自ヘリ事故 回収困難か フライトレコーダーは陸仕様」との記事を配信した。担当記者が言う。

「防衛省が自民党合同会議や参院外交防衛委員会で行った説明によると、海自や空自のヘリは洋上飛行を想定しているため、機体が水没するとフライトレコーダーが自動的に分離、海上まで浮かび上がると、『ビーコン』という発信装置で現在地を知らせます。ところが陸自のヘリは洋上飛行を想定していないため、フライトレコーダーは機内に設置されており、ビーコンも取り付けられていなかったそうです」

 軍事ジャーナリストの菊池征男氏は「確かに陸上自衛隊のヘリは、なるべく海上を飛ばないようにしています」と言う。

「今も全国各地を陸上自衛隊のヘリが飛んでいますが、防衛省の説明の通り洋上飛行を想定していません。そのため海に出るコースを取ることは基本的にありません。例えば、千葉県木更津市には陸自の木更津駐屯地があり、第1ヘリコプター団が置かれています。ヘリが富士山方面へ向かう場合は、東京湾上空を飛ぶほうが早く着きます。しかし約30分の余分な時間がかかっても陸の上を飛び続けるのです」

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