育休を取ると「職場の全員に10万円」が 三井住友海上火災保険の取り組みに専門家の声は?

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 少子化対策には財源が必要である。しかし、増税は難しい。そこで、国が目を付けているのが、民間企業の福利厚生マネーだ。なかでも、育児休業を取得すると他の社員に祝い金が配られると発表した三井住友海上には、岸田政権も注目している。なにしろ、小倉将信こども政策担当相が同社に駆けつけて社長からヒアリングするほどなのだ。

 三井住友海上火災保険が「育休職場応援手当(祝い金)」なる新制度を発表したのは3月17日のこと。それによると、同社では7月から、職場の誰かが育休を取ると最大10万円が職場全員に配られるという。

「もともと当社は、男性社員に1カ月以上の育休を義務付ける制度を一昨年に導入するなど、育休制度を充実させてきました。それでも、部署によっては“育休のために職場を離脱することで、同僚に負担がかかってしまうのでは”と、社員も遠慮が出てしまいがちです。そこで、皆が喜んでくれるような制度をということで手当の導入を決めたわけです」(広報部の担当者)

 育休で生じる負担は職場の規模や取得者の性別によって違う。例えば、13人以下の職場で女性が育休を取ると同僚に10万円。男性の場合は実態として育休期間が女性より短いため3万円が支給されるという。手当の額は職場の規模で5段階に分けられており、最大は41人以上。この場合は女性の育休で1万円、男性は3千円となっている。

“子どもを産んだから偉い”という空気にならないように

 大人数の職場だとありがたみが薄そうだが、同社の約1万7千人いる職員のうち半数以上が13人以下の部署(課や支社)に在籍している。同社では今年度、約600人の育休取得が見込まれているというから、さっそくお祝い金を受け取れる社員が続出しそうだ。

 千葉商科大学准教授で働き方評論家の常見陽平氏は、

「私もこれは画期的な制度だと思います。ただし、職場に対する“迷惑料”のような受け取られ方をされてはいけません。一方で“子供を産んだから偉い”という空気ができてしまうことにも注意するべきです。子供を授かれない社員へのハラスメントになってしまうからです」

 ちなみに同じMS&ADグループのあいおいニッセイ同和損保にこの制度は、まだない。

週刊新潮 2023年3月30日号掲載

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