オリックス「T-岡田」が捲土重来を期す…日本一連覇をめざすチームには“必要不可欠”

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「あの若者をよく見ておけよ」

 チャンピオンフラッグが、メーングラウンドのバックスクリーン上部のポールで、風に乗って、はためいている。

 オリックスの宮崎・清武キャンプは、2023年で9年目を迎えた。隣接する2球場で主力中心のA組と、若手・育成が大半のB組が同時に練習を行うことができ、ブルペンでは同時に10人が投げることが可能な一大施設こそが、一昨年、昨年のリーグ連覇、さらに26年ぶりとなる昨年の日本一奪回という「強さの基礎」を築いたともいえる。

 その“王者の拠点”を訪れたのは、気になるベテランに会いたかったからだ。

「あ、久しぶりですね」

 お目当ての人、T-岡田は、ジャージ姿だった。練習メニュー表を見ると「トレーナー指示」と記されていた。それは、つまり「故障中」ということだ。

「背中です。自主トレのときに、ちょっとやっちゃったんです。バットを振れないことはないんです。無理したら、やれないこともないんですけど……」

 ちょっぴり、ばつが悪そうな表情で、現状を明かしてくれた。
               
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「浪速のゴジラ」と呼ばれ、まだ「岡田貴弘」の本名でプレーしていた2009年のことだった。プロとしての実績はほとんどない、若手選手の一人に過ぎない頃だ。

「あの若者をよく見ておけよ。間違いなくすごい打者になるから」

 私にそう力説したのは、当時のオリックスの主砲で、近鉄時代の2001年には当時の日本タイ記録となるシーズン55本塁打を放ったタフィー・ローズだった。

 その予言通りというべきか、ローズがいなくなった2010年、登録名が「T-岡田」と変わったその年、22歳で本塁打王を獲得した。

 しかしそれ以降、その「33本塁打」を上回ったシーズンは一度もない。結果が伴わずに苦しみ、球団のポスターや看板から、その姿が消えた頃の苦悩ぶりも見てきた。

「吉田正尚」の穴を誰が埋めるのか

 キャンプ中に誕生日を迎えたT-岡田は、35歳になった。オリックスにおける最大の課題は、主砲・吉田正尚がメジャーへ移籍した今季、その穴をいかにして埋めるのか。その「力と実績」を兼ね備えた男の一人が、T-岡田だろう。

 吉田が務めていた「左翼」と「DH」を、一体誰が務めるのか。

 西武から、捕手の森友哉がFA移籍してきた。ただ、もう一人、オリックスが本気で狙っていた前日本ハム・近藤健介は、FAでソフトバンク移籍を選択した。

「一塁」を含め「打」が優先される3ポジションは、現時点では流動的でもある。プロ18年目のT-岡田にも、チーム事情はよく見えている。

「開幕は、若い選手とか外国人を使うでしょうからね。でも、彼らが調子を落としたりしてきたとき……ですね。その時に、自分が結果を出し続けておかないと」
 
新外国人のシュウィンデルは、メジャー通算22本塁打。昨季はカブスで鈴木誠也のチームメートだった右打者。同じくゴンザレスはメジャー通算107本塁打のスイッチヒッターで、内外野を守れるのもセールスポイントだ。

 この2人は「左翼」「DH」「一塁」のいずれにもあてはまる有力候補だろう。
 
 3年目の20歳・来田涼斗と元謙太、2年目の19歳・池田陵真、33歳の小田裕也、2年目の23歳・渡部遼人らの外野手が「左翼」のレギュラー争いで名前は挙がるが、いずれも現時点では“帯に短し、タスキに長し”で、決め手がない状況でもある。

 内外野を器用にこなすマルチプレーヤーの中川圭太と、捕手登録ながら強打が自慢の頓宮裕真は「一塁」の有力候補だ。森がマスクをかぶらない日は「DH」での起用もあり得る。

 まさしく群雄割拠。ゆえにいつか必ず、自分にもチャンスが巡ってくる。その時が訪れるのを信じて、復調へ向けて、焦らず、着実に歩を進めている。

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