ドラフト4位入団の“小柄”な右腕「山本由伸」は、なぜ「日本のエース」になれたのか オリックスのスカウトが見抜いた“日の丸を背負える才能”

スポーツ 野球

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 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する日本代表の12選手が1月6日に先行発表され、そのうち6人が投手だった。身長196cmのダルビッシュ有(パドレス)を筆頭に、193cmの大谷翔平(エンゼルス)、190cmの佐々木朗希(ロッテ)、187cmの戸郷翔征(巨人)とスケールの大きな投手たちが居並んでいる。右腕投手は計5人で、唯一180cm未満なのが178cmの山本由伸(オリックス)だった。<5回連載の第1回>【中島大輔/スポーツライター】

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 昨季、史上初となる2年連続の投手四冠(最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振)に輝き、沢村賞と最優秀選手も連続受賞した山本は今や「日本最高投手」と誰もが認める存在だ。球界では大型投手が増えているなか、山本は「小柄」に分類される。2022年2月28日時点でNPB(日本野球機構)に支配下、育成登録された投手502人の平均身長は181.9cm。山本は5cmほど及ばない。

 プロ野球のスカウトが身長の大きな投手を探すのは、球速や球威と相関関係が大きいからだ。背丈が大きければ、それだけ筋量をつける余地がある。

 対して、周囲より小柄な山本だが、昨季自己最速の159km/hを記録。フォークは同151km/hを計測し、対峙するバッターを力でねじ伏せている。今オフには推定年俸6億5000万円で更改し、球界トップに到達した。

 24歳で「日本最高投手」に登り詰めた山本は、極めて“異質”な投手と言える。

 プロの投手として決して恵まれた肉体を誇るわけではないが、身体を大きく使って強い球を投げ込んでいく。特に右腕を大きく後ろに引き、右肘をほとんど曲げずに投げる投球フォームは独特で、プロ入り2年目に台頭した頃には「アーム投げ」と批判されたほどだ。

「こんなカットボールを見たことがない」

 西武の山川穂高は2018年に初めて対戦した際、そう驚きの声を発している。山本は投球動作における身体の使い方だけでなく、変化球の球筋も他の日本人投手とは異なるからだ。

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