筒香嘉智「マイナー契約」でもイチローに匹敵するチカラとは 巨人の“誘惑”に動じず「米国で引退」の声

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

有原航平は「メジャーでの活躍ではなくプレー自体が目標だった」

 マイナーでは通訳も付かず、長距離移動、簡素な食事など過酷な環境下でプレーを続けた。

「筒香はそれでも弱音を吐かなかった。有原(航平投手=現ソフトバンク)も今オフに、レンジャーズを戦力外になってから最初はメジャー残留を模索していたが、好条件が見込めないと判断すると、すぐに日本球界復帰へと舵を切った。早大時代の米国遠征でメジャーに憧れを抱くようになったが、メジャーでプレーすることが目標で、活躍することが目標ではなかったように感じた。確かにベースとなる直球のスピードを欠き、多彩な変化球も十分に生かせなかったことは(活躍できなかった背景に)あったが、何が何でもメジャーで成功したいという気持ちが欠けていたことが大きかった」(米大手マネジメント会社の代理人)

 かつてロッテからツインズにポスティング移籍した西岡剛内野手も、同様の心持ちだったことを明かしている。世界最高のリーグは、強固な動機づけを持たずして活躍できるほど生易しい世界ではない。

「メジャー球団と契約した時点で仕事を終えた感覚になる選手は少なくない。特に複数年で大きな契約を結ぶと、そうなりがち。本当の意味で、契約が出発点と思える選手の方が少ないのではないか」(同代理人)

村上宗隆や吉田正尚も模範に

 マリナーズで日本人初のMLB野手となったイチロー、巨人からのヤンキース移籍で続いた松井……、草創期の日本人野手のメジャーリーガーたちは背水の陣の覚悟で海を渡った。

「筒香が子どもの頃から憧れていたイチローも、松井も骨をうずめる覚悟でアメリカに行った。実際にアメリカでキャリアを終えた。成功しなければ日本に戻ればいいという気持ちに見えた一部の選手とは気概が違った。才能、努力以外にメジャーで成功をつかむ不退転の決意があったからこそ、アメリカでも成績を残せたのだと思う」(NPB球団の元監督)

 それにしても、筒香は長距離打者として確固たる地位を築いた日本には簡単に戻らず、厳しいマイナー生活を厭うことなくMLBにこだわっている。こうした選手は過去を振り返っても稀だ。

「メジャーで結果を残せなかったのに、メジャーリーガーというだけで日本の球団が大型契約を提示し、三顧の礼で迎える傾向には疑問を感じていた。日本人選手が一度、メジャーに行った場合は安易に戻ってこられないよう、例えば、5年は日本でプレーできないなどのルールを導入すればいいとも思っていた。ただ、筒香を見ていると、そうした制約は要らないと思えるほどのひた向きさがある。レンジャーズでも左打ちの内野手がレギュラーを確保するのは容易ではない。にもかかわらず、挑戦をやめない姿勢は吉田(正尚外野手=レッドソックス)や、これからメジャーを目指す村上(宗隆内野手=ヤクルト)も模範としてほしい」

 ファンや球界関係者の願いを代弁するように元監督は言った。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。