「経済対策39兆円」でも「岸田増税ラッシュ」で国民貧困化 【元内閣官房参与・京都大学大学院教授 藤井聡氏特別寄稿(抜粋)】

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恐るべき「岸田増税ラッシュ」

 さらに、消費税のインボイス制度の導入は、零細業者を中心とした人々に対する大きな増税となる。その増税額は一事業者あたり15.4万円と試算されている。その他、本年10月から労働者の雇用保険が約7割増え、第三のビールの酒税も35%引き上げられると同時に、「森林環境税」が2024年度に創設され住民税が増える見通しだ。

 また、電気自動車等の普及によるガソリン税収入の目減りに対応するために、自動車の走行距離に応じて課税する「自動車走行距離課税」の導入の他、相続税、贈与税、退職金課税の増税も検討されている。

 そして社会保障や少子化対策の財源確保として「消費税の15%への引き上げ」もまた、自民党の甘利明前幹事長らがはっきりと言及する他、防衛費の増額に対応するための「法人税」や「所得税」の増税が決定されようとしている。

財政はむしろ「悪化」する

 こうした「岸田増税ラッシュ」の一部には、増税することで経済成長を促す効果を持つものもあるが(例えば賃上げ、投資拡大を促す法人税)、それ以外の「増税」は経済を確実に低迷させる。

 その代表例が消費増税だ。消費増税は消費を落ち込ませ経済を激しく冷え込ませる。またそれ以外の増税項目も全て私たちの家計における可処分所得を縮小させる。したがってこれらの増税はいずれも私たちを「貧困化」させると同時に経済成長を鈍化させる。

 なお、経済が低迷すれば財政は確実に悪化する。岸田内閣は「財政再建」のつもりで増税ラッシュを仕掛けようとしているものの、その結果経済が停滞し、最終的に財政がさらに悪化するのだ。この悪夢のような事態の責任は、学級崩壊のそれが先生にあるようにやはり、岸田総理にあると言わざるを得ない。総額39兆円という額も中身も中途半端な「単発」の経済政策を行い、各種の「恒久」的な増税をそのまま受け入れんとしているのが岸田総理その人だからだ。

 そんな日本を今、立て直すことが出来るのもまた、岸田総理しかいない。

「週刊新潮」2023年1月5・12日号1月19日号「MONEY」欄の有料版では、岸田政権の経済政策に関する藤井聡氏の特別寄稿を前後編2回にわたって紹介する。

藤井 聡(ふじい・さとし)
京都大学大学院教授。1968年奈良県生まれ。京大卒。イエテボリ大客員研究員、京大大学院工学研究科助教授、東工大大学院教授等を経て現職。専門は公共政策論。著書に『日本滅亡論』『グローバリズム植民地ニッポン』等。

週刊新潮 2023年1月5・12日号/1月19日号掲載

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