山上容疑者の母親が語った“本音”「信仰は続けたい」 妹は「事件起こしたとか言われても、知らん」【スクープその後】

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親族にも献金を求め…

 実際、統一教会はあの手この手で金を吸い上げた。その一つが母親も参加したという“霊肉界祝福式”だ。

「寡婦が死別した伴侶と祝福(結婚式)に臨む儀式で、参加するに当たり、教会からは多額の献金を要求されます」(宗教ジャーナリスト)

 また母親は、伯父に教会への献金を乞うてもいた。

「“献金してくれ”と母親に言われてな。入信を勧められたわけではなく、お金だけ払うよう勧められたんや。“私の霊や夫の霊を慰めなさい”って。4代前までの霊を治めるために1回40万円払えって理屈です」(前出・伯父)

 山上容疑者自身もTwitterで、

〈オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた。統一教会の本分は、家族に家族から窃盗・横領・特殊詐欺で巻き上げさせたアガリを全て上納させることだ。70を超えてバブル崩壊に苦しむ祖父は母に怒り狂った、いや絶望したと言う方が正しい。包丁を持ち出したの(ママ)その時だ。〉(20年1月26日)

 と、統一教会によって、一家が苦境に立たされていった様子をつづっている。

大学は金銭面の問題で断念

 山上容疑者は地元の小学校と中学校を卒業後、奈良県下の名門・郡山高校に進学する。

 母親の信仰は彼の人生に暗い影を落としていたものの、その時点までは、前途は決して悲観すべきものではなかっただろう。だが、98年に建設会社を営んでいた母方の祖父が死去すると、状況は一変。母親が会社の土地を相続したが、

「それを処分して、2千万円を作り、即座に献金してしまいました」(同)

 結局、母親が教会に献金したのは、保険金と自宅を含め複数の不動産の売却代金などを合計し、1億円は下らないという。結果、

「大学は入学金や学費の問題があって、断念せなあかんかった。それで、公務員として働こうと、進路を変えたんです。消防士になりたいという話が徹也からあり、そのための予備校にも通わせました」(同)

 だが、努力のかいなく、

「消防士の試験、筆記は通ったんやけど、実技で落ちて。かなりの近眼だったからでしょう。結局、私の親族が徹也に海自の働き口を見つけてきました」

 任期制自衛官として、02年8月、海上自衛隊の佐世保教育隊に入隊。ようやく人生が上向きになるかと思われたのも束の間、今度は母親がその年の12月に自己破産に追い込まれる。

兄と妹を救おうと自殺未遂を

 もはや、宗教が一家の生活基盤を根こそぎ奪ったのは明らかだ。この点、統一教会側は今月14日のコメントで、これまで自発的に一家に5千万円を返金してきたかのように説明したが、

「それは違います。私が、統一教会側に対して母親の破産の情報を全部知らせろ、献金の一覧を全部出せと迫ったんです。そしたら教会側から、5千万円で全部勘弁してくれと言ってきたんです。全部うやむやにするために」(同)

 もっとも、伯父の交渉虚しく、母親は返金された分まで再び統一教会に寄付してしまったという。息子の絶望は想像に難くない。そして05年1月、“事件”が起きる。

「徹也が自殺未遂したんです。統一教会が原因で兄と妹の生活まで困窮している。そこで、自分が自殺して保険金を渡そうと考えたというわけです。本人からそう聞きました」(同)

 一命を取り留め退院したのち、海自を抜けた彼は測量会社など複数の勤務先でアルバイトをしながら暮らし始める。

「生活を立て直そうとしたのでしょう、山上容疑者は働きながら宅地建物取引主任者(現・宅地建物取引士)、2級ファイナンシャル・プランナーなどの資格を取得しました」(社会部記者)

 ところがそんな中、さらなる不幸が。彼が自らの命と引き換えにその生活を守ろうとした兄が、15年に将来を悲観して自殺。親族によれば、山上容疑者は葬儀で、

「なんで兄ちゃん死んだんや。アホやな、生きていたらええことあるのに」

 そう嘆いていたという。

〈安倍は本来の敵ではない〉

 兄の死をもって、ジョーカーに変貌する素地は整ったといえよう。ただあくまでも、憎しみの対象は一貫して統一教会であり、米本氏への手紙でもこう記している。

〈苦々しくは思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません。

 文一族を皆殺しにしたくとも、私にはそれが不可能な事は分かっています。分裂には一挙に叩くのが難しいという側面もあるのです。

 現実に可能な範囲として韓鶴子本人、無理なら少なくとも文の血族の一人には死んでもらうつもりでしたが鶴子やその娘が死ねば3男と7男が喜ぶのか或いは統一教会が再び結集するのか、どちらにしても私の目的には沿わないのです。〉

 なお、ここに登場する三男は教団から追放された存在で、七男もサンクチュアリ教会なる分派を率いている。山上容疑者が韓鶴子を敵視し、“銃器礼賛”思想のサンクチュアリに属しているとの情報が一部であったが、それは誤りのようだ。

 米本氏は、

「“安倍は本来の敵ではない”という認識は合っていますよね。本人が自覚している通り、一番に韓鶴子を狙いたかったけど、できないから安倍さんを、というのはおかしいよね。もっと違う方法があるはずなのに、それを考えられないくらい追い込まれていたということでしょうか」

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