カルト宗教の家で育てられトラウマを持つ横道誠 部屋を動物の剥製など「不気味な品々」で埋め尽くす理由とは

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いちばん「やばい」と思っているもの

 ヤマネコの剥製をひとつ、アルマジロの剥製もひとつ、亀の剥製は五つほど。孵化しかけているワニの赤ちゃんの剥製も岐阜で購入した。小さなトカゲやネズミをかわいいサイズの瓶に封じた骨格標本。おおきな眼球の模型は、分解できて視覚の機能を理解できる優れものだ。サメの内臓の仕組みが見えるように皮膚が部分的に透明になっているプラモデル。海に沈めて、桜色のきれいなフジツボがびっしりついた状態になってから引きあげた湯呑みもある。それで何かを飲みたいとは思わないけど。ほかにも、いろんな怪奇趣味の品々が私の部屋に宝の山のようにある。古書価が高騰している怪奇マンガも大量にそろっている。

 こうした品々のうち、私がいちばん「やばい」と思っているのは何か? それは廃病院で保存されていた女性の……。いや、これは読者の気分が悪くなるかもしれないから、さすがにやめておこう。これらの品々のおかげで、私は心が休まって、毎晩安眠をむさぼっていられる。壁に吊るされた血管系の人体模型のケーちゃんと神経系の人体模型のシンちゃんに「おやすみなさい」と言ってから電気を消す。あなたも一度、私のすみかに遊びに来ませんか。

横道 誠(よこみち・まこと)
1979年生まれ、大阪市出身。専門はドイツ文学、ヨーロッパ思想、比較文化。著書に『みんな水の中』『イスタンブールで青に溺れる』など。

デイリー新潮編集部

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