巨人、「次の坂本勇人を探せ!」と指令も 20年続いた“ショートの安泰”が突き付ける厳しい現実

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成功体験が足かせに

 その悩みを深くしているのが巨人、そして原辰徳監督自身の大きな“成功体験”だという。スポーツ紙の巨人担当記者は、以下のように解説する。

「巨人のショートは名手と言われた川相昌弘の後、逆指名で獲得した二岡智宏がいきなりレギュラーに定着しています。二岡が故障と不倫スキャンダルがあった時に、またすぐに坂本が出てきました。そして、その坂本を抜擢したのが二度目の就任となった原監督でした。最初に監督に就任した時も、既に二岡がレギュラーとして活躍していました。二岡も坂本も大型ショートで長打力があり、過去の巨人にはいなかったタイプです。そんな2人がプロ入り間もない時期にレギュラーになり、20年以上にわたってショートに関しては、攻守ともに苦労しなかった時期が続いたわけです。これは非常に珍しいケースで、他にこんな球団はありません」

 この20年以上も続いた“ショートの安泰”が逆に大きな壁になっているというのだ。前出の記者が続ける。

「だから、原監督からすると、吉川や中山みたいな長打力を期待できないタイプは物足りないところがあるようですね。長打力に定評がある広岡をトレードで獲得したのも、『打てるショート』にしたいという思いがあった。ただ、他の11球団を見ても分かるように、二岡、坂本クラスの長打力を兼ね備えた「打てるショート」は、そういるものではありません。巨人や原監督が、そのあたりの折り合いをつけられるか、どうかですね」

一番難しいオーダー

 アマチュア選手を発掘する現場にいる巨人スカウトにも「次の坂本勇人を探してこい!」という厳しいオーダーが出ているが、前出の記者が指摘するように、日本プロ野球の歴史でもナンバーワンと言えるショートを獲得して育てるというのは極めて難しいミッションである。

 ちなみに、今年のドラフト候補では、戸井零士(天理)、金田優太(浦和学院)、イヒネ・イツア(誉)など高校生に大型ショートがいるとはいえ、1位指名確実という目玉は不在である。

 大学生の有力候補である、奈良間大己(立正大)、田中幹也(亜細亜大)、友杉篤輝(天理大)などは小柄なリードオフマンタイプで、坂本や二岡とは持ち味が異なっている。他球団のスカウトも「次の坂本勇人なんて滅多にいないですよ。一番難しいオーダーじゃないですか?」と話していた。

 また、仮に今後、そのような大物ショートが出てきたとしても、二岡の時のように逆指名制度があるわけではない。いつまでも二岡、坂本を追い求めていては、今いる選手の“旬”を逃してしまうことに繋がる恐れがある。

 果たして、この難題に巨人がどのような判断を下すのか。巨人の“ポスト坂本”問題はしばらく続くことになりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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