現役国税職員が手を染めた「持続化給付金」詐欺 その特別で巧妙な手口とは?

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怪しいものは後で取り締まる

 コロナ禍で影響を受けた事業者に国から支給される「持続化給付金」をだまし取ったとして、東京国税局の職員など男女7人が逮捕された事件は世間に衝撃を与えた。取り締まる側の国税職員が犯罪に加担していたことがもちろん大きいのだが、その申請の手口が明らかになりつつあり、こちらもまた注目を集めそうだ。

 詐欺容疑で逮捕されたのは東京国税局鶴見税務署の職員、塚本晃平容疑者(24)ら20代の男女7人で、このうち大和証券の元社員、中峯竜晟被告(27)ら5人はすでに起訴されている。

「塚本容疑者らは3年前、中峯被告が開いたオンラインの投資セミナーで知り合いました。中峯被告からの提案でコロナ禍に乗じて給付金を騙しとり、それを暗号資産へ投資することになったようです。勧誘した大学生ら約200人にLINEで不正受給の方法を指南し、ウソの申請をさせることで手に入れた額は2億円にのぼるとされています」

 と、社会部デスク。

「持続化給付金は給付のスピードを重視するあまり、審査がザルになっているとの指摘が当初からありました。当時の官邸としては織り込み済みで、怪しいものは後で取り締まればよいという方針のもと、コロナ禍が落ち着きそうな頃合いを見計らって捜査を進めてきたようです」(同)

確定申告に精通した現役職員

 改めて持続化給付金の趣旨を確認しておくと、「感染症拡大により、特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を下支えし、再起の糧としていただくため、事業全般に広く使える給付金を支給します」というものだ。給付対象の主な要件として、「新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者」とある。

「給付金の申請に確定申告が必要になります。税務署で税金を徴収する徴収部門に所属した塚本容疑者はそれに精通していました。勧誘した若者らを年間の売り上げ数十万円程度の個人事業主に仕立て、収入を少し上回るくらいの経費がかかったということで確定申告書を出させたようです」(先のデスク)

 そのうえで、給付の要件である「コロナ禍によってひと月の売上が前年同月比で50%以上減少した」とし、利益ゼロの確定申告書と事業収入が減ったように見えるニセの帳簿を提出。個人事業主が受け取れる最大額の1人100万円を不正受給していたという。

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