政見放送を「ガーシーch」がジャック宣言 “選挙公約”に47個の暴露話という異常事態

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最高裁まで争われたケースも

 立候補者が自身の主張や公約をテレビやラジオを通じて訴える「政見放送」は公職選挙法に基づき、その内容について放送局側が編集などすることは原則、できない決まりになっている。

 しかし公選法第150条の2において<他人(中略)の名誉を傷つけ(中略)善良な風俗を害し(中略)特定の商品の広告その他営業に関する宣伝>など、<政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない>と定めている。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう話す。

「芸能人のこととはいえ、政見放送内で名誉棄損に該当するようなことを言えば、公選法に抵触する可能性は出てきます。今回は放送局側も判断に迷うのではないか。公選法の趣旨は、政見放送だからといって、何を喋ってもいいわけではないことを示しています」

 実際、1983年の参院選において、ある候補者が政見放送の場で身体障害者に対する差別的な発言をし、NHKが不適切と判断。一部を削除して放送したことに対し、「勝手に削除したのは公選法違反だ」として、候補者がNHKと国を訴えたケースがあった。同裁判は最高裁まで争われ、90年、最高裁は「削除は適法」との判断を下している。

 過去にも「選挙系ユーチューバー」と呼ばれる候補者が政見放送で過激な言動を披露して物議を醸したことはあったが、今回の東谷氏のケースはこれまでとはインパクトが違うという。

「嘘の正義より真実の悪」

 東谷氏の選挙ポスターのキャッチコピーは<嘘の正義より 真実の悪>。“ダークヒーロー”に相応しい言葉だが、政見放送の“ガーシーch”化には深刻なリスクもつきまとう。

「本当に政見放送で芸能人の暴露話を次々と披露すれば、そのハレーションの大きさは容易に想像でき、今後の政見放送の在り方そのものにも影響を与えかねません。政見放送に事前チェックなど規制をかける議論が起こる可能性もある。仮に東谷氏の発言がきっかけとなって、政治的発言の自由度を損なう方向へと向かえば、その代償は大き過ぎる」(伊藤氏)

 当選した暁には「本気で日本の芸能界、変えたいと思っている」と話す東谷氏。韓国の例を出して、エンターテイメント産業を国が支援する仕組みをつくることによって、「日本の芸能事務所も悪いことをしなくなると思う」と訴える。

「しかし、その目的のために自身が取る手段がすべて免罪されるわけではありません。東谷氏の場合、仮に落選しても知名度アップが見込まれ、結果的に自身のYouTubeチャンネルが潤うことに繋がりかねない。公選法で禁じる政見放送を“宣伝に利用”したとの批判を受ける可能性もあります」(伊藤氏)

 かつて「3億円の借金」があると公言していた東谷氏だが、先月には「4500万円程度」(業界関係者)と噂されるYouTubeの収益金を初めて手にしている。供託金として払う600万円が落選によって没収されようと、いまの東谷氏には痛くも痒くもないのかも。当落にかかわらず、“ひとり勝ち”となるか。

デイリー新潮編集部

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