落合博満が不意を突かれた“あり得ないプレー”…忘れがたき「痛恨のボーンヘッド」

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“負の連鎖”

 一方、バッテリーのコミュニケーション不足が原因で、走者のいない一塁にけん制球を投げてしまったのが、ヤクルトの助っ人・マクガフである。20年9月3日の阪神戦、3対2とリードしたヤクルトは、7回裏に1死一、三塁のピンチを迎えたところで、高橋奎二に代わって、中継ぎエースのマクガフがマウンドに上がった。

 マクガフは代打・中谷将大を3球三振に打ち取り、2死。ここまでは台本どおりだった。ところが、次打者・近本光司の1ボールからの2球目に一塁走者・陽川尚将に二盗を決められ、二、三塁となったことが、混乱をもたらす。

 カウント2-1からマクガフは、4球目を投げる前に、あろうことか、一塁にけん制球を投げてしまったのだ。

 実は、陽川の二盗の際に、捕手・西田明央は三塁走者の本塁突入を警戒してか、送球をあきらめたような反応だった。この結果、近本との勝負に集中していたマクガフは、自分の背後で起こったことに気づかず、まだ一塁に走者がいると思い込んだようだ。

 さらに“負の連鎖”は続く。ファースト・坂口智隆もベースに入っていなかったので、捕球できなかったのは当然として、リリースの際にボールがマクガフの指に引っ掛かり、微妙な変化を与えたことから、コントロールが狂い、一、二塁間を抜けたボールは外野のファウルゾーンを転々。この間に2者の生還を許し、逆転されてしまった(記録はボークと悪送球)。

 たった1球のミスで勝ち試合を落とす結果を招いたヤクルト・高津臣吾監督は「ひとつのミスがこれだけ大きな失点につながる。減らしていかないと」と反省しきりだった。

うっかりミスもスポーツ観戦の醍醐味

 勘違いがさらなる勘違いを生んだケースが、1983年8月12日の大洋対中日である。0対3の3回、大洋は1死一、三塁で、古賀正明が中前にワンバウンドする打球を放ち、三塁走者・屋鋪要がホームインしたが、センター・平野謙がダイレクトキャッチしたように見えたことから、一塁走者・辻恭彦は帰塁してしまい、二封アウトになった。

 2死一塁で試合再開直後、今度はマウンドの藤沢公也が何を思ったか、走者のいない三塁に送球して、ボークをとられてしまう。

 辻同様、中飛と思い込み、屋鋪がタッチアップしないで生還したことをアピールするために送球したようだが、判定はワンバウンドなのだから、意味がない。とんだ藪蛇で、2死二塁とピンチを広げる結果を招いたものの、後続を断ったのは幸いだった。

 プロの選手であっても、時には人間であるが故のうっかりミスをやらかしてしまうのも、スポーツ観戦の醍醐味のひとつかもしれない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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