巨人の新守護神、ルーキー大勢に早くも囁かれる“2つの不安材料”

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「ストレートが走ってなんぼ」

 ただ、予想以上の活躍をみせる大勢に対して、一部ではこんな声も出ている。

 高校時代から大勢のピッチングを見ている、ある球団のスカウトは、「大勢のストレートは、速いだけではなくて、強さもあるうえ、打者の手元で動くので、かなり打ちにくい。また、変則フォームなので、慣れるまではバッターも大変でしょう」としたうえ、こう続けた。

「ただし、大学の時も肘を痛めて、全く投げられないシーズンがあったので、1年目から、抑えでフル回転させるのは、怖いですよね。原(辰徳)監督も、3連投は避けているみたいですが……。それと、故障とまではいかなくても、“ストレートが走ってなんぼ”のピッチャーですし、(連投で)疲れが出て、ストレートの勢いが落ちてくると、バッターを抑えるのは苦しくなると思います。(ストレートに比べて)変化球はまだまだですからね。今の好調な状態を維持するためには、休ませる時期が必要じゃないでしょうか」

 筆者は、大学院で野球の動作解析について研究していたが、その視点から大勢の投球フォームを見ると、もうひとつ“気になる点”がある。

「逆W字」フォームへの懸念

 テイクバックの時に、両肩を結ぶラインよりも肘が高くなっていることだ。これは、米国では「inverted W」(逆W字)と呼ばれるもので、この形になる投手は肘の故障が多いという説がある。これは、肘の側副靭帯に負担がかかる動きであり、逆W字の動きをする投手が、側副靭帯を損傷や断絶し、トミー・ジョン手術を受けるケースも目立っている。

 必ずしも「逆W字」になる投手が、肘を怪我しているというわけではないが、大勢は大学時代に肘の故障によって長期間戦線を離脱した過去を考えると、今後の“不安要素”になる可能性は否定できない。

 巨人の投手陣には、デラロサ、ビエイラという抑え経験者がいるものの、ともに状態は上がっていない。また、ここ数年フル回転でチームを支えた中川皓太、鍵谷陽平、高木京平も二軍での調整が続いている(4月3日時点)。巨人に限ったことではないが、リリーフ投手は調子の良い時に起用し過ぎて短命に終わることが多く、大勢の起用法に不安を感じているのは、前出のスカウトだけではないはずだ。

 昨年、37セーブで最優秀救援投手に輝き、新人王も獲得した広島の栗林良吏でさえ、2年目の今年は開幕から苦しんでいることを考えると、大学でそれほど実績がなく、また故障歴がある大勢に頼り過ぎるのは、やはり危険ではないだろうか。

 オフに3年契約を結び、新たなチームを作ると宣言した原監督が果たして、大勢をどのようにうまく起用しながら、勝ちに繋げることができるのか、今年の大きな注目ポイントになりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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