巨人の新守護神、ルーキー大勢に早くも囁かれる“2つの不安材料”

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巨人優勝のキーマン

 いよいよ開幕した今年のプロ野球。各球団、新戦力のプレーに高い注目が集まっているが、ルーキーでここまで驚きの活躍を見せているのが、巨人のドラフト1位、大勢(本名・翁田大勢)である。不調のビエイラに代わって、抑えを任せられると、開幕からいきなり2試合連続でセーブを記録した。これはNPB史上初のことである。【西尾典文/野球ライター】

 続くヤクルト、阪神とのカードでも2セーブずつをマークし、ここまで6試合の登板で6セーブと「新守護神」にふさわしいピッチングを続けている(4月3日終了時点)。150キロを超えるストレートで、強気に押すピッチングは迫力十分で、2年ぶりのリーグ優勝を狙う巨人にとって、大きな新戦力であることは間違いないだろう。

 一躍、巨人優勝のキーマンとなった大勢であるが、昨年10月のドラフト会議までは、そこまで注目された存在ではなかった。

 それにはいくつかの理由がある。一つ目は、高校、大学を通じて、全国大会の出場経験が一度もないという点だ。西脇工時代は、3年夏の兵庫県大会5回戦、対育英戦で最速148キロをマークするなど、7回を1失点と好投したが、味方の援護はなく0対2で敗れ、甲子園の夢は消えた。

 また、関西国際大時代には、新型コロナウイルスの感染拡大によって、3年春の大学選手権、秋の明治神宮大会がそれぞれ中止になる“不運”も重なり、一度も神宮球場のマウンドに立つことはなかった。

全12球団50人のスカウトが球場に殺到

 二つ目は、右肘の故障とコロナ禍による影響だ。大学2年秋にリーグ戦で2勝を挙げたが、3年春は、新型コロナでリーグ戦自体が中止となり、3年秋と4年春は、右肘の故障に満足に投げることができなかった。

 4年秋にようやく復帰したものの、関西国際大が加盟する阪神大学野球連盟は、2021年9月末まで、プロのスカウトが球場に入場することを認めていなかったため、各球団が大勢の回復具合を確認できない状況にあった。

 ようやく、スカウトも含めた入場制限が解除された10月4日の試合には、大勢を目当てに全12球団50人のスカウトが球場に殺到している。多くのスカウトの前で、大勢は14奪三振と結果を残したが、それはドラフト会議のちょうど1週間前だった。この1試合の投球だけで、ドラフト指名に踏み切るべきかを判断するのは難しいと感じた球団が多かったようだ。

 一方、巨人は、大勢がリーグ戦前のオープン戦で素晴らしい投球を見せていたことを確認ができていたようで、ドラフト会議で外れ1位で指名に踏み切る。結果的に、この思い切った判断が、新守護神の誕生につながった。

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