「妻、小学生になる」最終回 視聴者の胸に刺さるドラマになった理由

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視聴率も好調

 このドラマは小学4年生を登場させたことにより、「家族愛」「子育て問題」「喪失と再生」というテーマを鮮やかに描くことに成功した。当初は「なぜ死んだ妻が小学生に?」とクビを捻る向きもあったが、絶妙の設定だった。

 主要キャストの堤、石田、蒔田、吉田は演技力に定評のある人ばかり。今回も実力を見せつけた。貴恵の弟で売れない漫画家・友利役の神木隆之介(28)、圭介を好きになる同僚の守屋好美役の森田望智(25)ら助演陣も好演した。

 魂や憑依など現実にはあり得ない話を物語化する場合、うまい人たちがやらないとリアリティーが出ない。芝居巧者がそろったから、この作品は成立した。

 万里華役の毎田暖乃(10)は小さな体で作品をリードした。見事だったのは貴恵が憑依した万里華とそうでない子供の万里華の演じ分け。

 毎田は2役を演じたことになる。2役は大人でも難しいとされるが、毎田ははっきりと役を区別させることに成功した上、どちらの演技も観る側を引き付けた。

 印象的だったのは第9話の登校シーン。万里華は千嘉に見送られ、寝ぼけまなこで自宅を後にした。直後、散歩中の犬を見つけた途端、「あっ、バル! おはよう」と声を弾ませた。愛くるしい10歳児そのものだった。万里華に憑依した貴恵が圭介を叱る姿から一変した。

 この作品は反響が大きかっただけでなく、視聴率も決して悪くなかった。目に触れやすい世帯視聴率は3月11日放送の第8話までで全話平均値が7.1%(個人同4.2%)だが、録画でのタイムシフト視聴分も合わせた総合世帯視聴率の平均値は第7話までで14.3%に達している。

 最新データである第7話のタイムシフト世帯視聴率は8.4%。全番組中で週間4位に位置する。非公開のコア視聴率も上々だ。

 最終回では麻衣と交際相手の愛川蓮司(杉野遥亮)との恋に決着が見られるはず。1度は圭介に振られた守屋さんの再アタックもありそう。

 第8話で貴恵が憑依した万理華は、振られたことを打ち明けた守屋に対し、「それでいいの?」と問い掛けた。まるで守屋の背中を押すような口ぶりだった。

 貴恵は守屋なら圭介を託してもいいと考えているように映る。それが2人のためになると考えているのではないか。

 貴恵は最後の最後まで圭介と麻衣の幸せを願い続けるのだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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